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「オチがトラウマ」「考えると余計怖い」 『まんが日本昔ばなし』の「山」の恐怖回

1975年から94年まで放送された『まんが日本昔ばなし』は、多くの子供たちが視聴し、教訓になる話も多数ありました。その一方で、忘れられないようなトラウマの回もあります。今回は「山が舞台」の恐怖回を振り返ります。

「最終回」でとんでもないトラウマエピソード登場

『まんが日本昔ばなし』の傑作怪談回を振り返る特集の「時空旅人 2021年9月号」(三栄)
『まんが日本昔ばなし』の傑作怪談回を振り返る特集の「時空旅人 2021年9月号」(三栄)

 1975年から94年にわたって長く放送され、多くのファンから支持されてきたTVアニメ『まんが日本昔ばなし』は、今でも教育的観点から子供に見せたいという声も多く、高い評価を得ています。しかし、同番組には子供に見せたくないどころか、大人も怖くて見返せないような「トラウマ回」も多々ありました。今回は登山シーズンの秋が近付くなか見ると余計怖い、「山が舞台の恐怖回」を振り返ります。

 山に棲む得体のしれない怪物の恐怖回として名高いのが、1978年3月11日放送の「牛鬼淵(うしおにぶち)」です。伊勢(現在の三重県)の山奥が舞台で、そこには「牛鬼」と言う恐ろしい怪物が住んでいるという言い伝えがあるなか、年寄りの木こりと若い木こりが山小屋に住み込みで作業をしにやってきます。

 年寄りの木こりは、若い木こりが酒を飲む横で、毎晩丁寧にノコギリの手入れをしていました。ある日の夜のこと、小屋を覗き込んできた怪しげな男が、「何しとるんじゃ?」となかへ上がりこんでこようとします。年寄りの木こりが、とっさに男にノコギリを見せ「このノコギリの32枚目の刃は、『鬼刃』っちゅうて鬼をひき殺す特別な刃じゃ」と言うと、男は黙って去っていきました。

 その後も毎晩男はやってきましたが、年寄りの木こりは同じことを言って追い返します。しかし、ある日の作業中に「鬼刃」が折れてしまいました。年寄りの木こりは修理のために山を下りることにしますが、若い木こりは忠告も聞かずにひとりで小屋に残ります。そして、いつものように小屋にやってきた男は、その場に「鬼刃」がないことを知ると、恐ろしい正体を現し…。

 救いのないラストや、毎晩同じように「何しとるんじゃ?」と聞いてくる男の不気味さなど、いろんな点が「トラウマ」と呼ばれている回で、「同じことを聞いてくるのが何考えてるかわからん昆虫的な恐怖を感じる」「昔からの教えやそれを知ってる年長者からの警告の言葉がとても大事なんだなと考えさせられる話」「鬼刃が折れる場面の演出も怖い」と、長年屈指の恐怖エピソードとして語り継がれています。

 その他、1983年12月3日放送の「十六人谷」も、トラウマ回として有名です。飛騨山中に住んでいた若い木こりの弥助は、山でうわばみに殺された仲間の通夜で酔っぱらって家に帰ると、謎の女に出くわし、「谷の柳の木だけは切らないでくれ」と言われます。弥助は女の言うことをはね付けますが、彼女は念を押して去っていきました。

 しかし、翌日弥助は15人の仲間たちと山に入り、そして立派な柳の木を見つけてしまいます。そこで、昨晩と同じ女の姿を見た弥助は、怖くなって仲間たちを止めますが、彼らは忠告を聞かずに柳を切り倒してしまいました。その晩、弥助たちが寝ていた小屋にあの女が現れ、一人ひとり「口づけ」をして舌を引き抜いて殺していきます。弥助は山刀で女を切りつけ、その場を逃れますが……。

 この回は老人になった弥助が謎の若い女に昔話をする形で進みますが、最後にその女があの時の女だと分かり、弥助は舌を抜かれた状態で家族に発見されます。なぜか弥助は恍惚とした表情で死んでおり、この事件以降、柳の木があった谷は犠牲者数にちなんで「十六人谷」と呼ばれる様になりました。「女が舌を吸い取る音がリアルすぎてトラウマ」「若者たちのその場のノリが止められない感じが怖い」「弥助の死に方はある意味幸せかも」と、こちらもいろんな意見が出る恐怖回として語られています。

『まんが日本昔ばなし』の最終回となった1994年8月27日放送の「飯降山」は、かわいらしい絵柄とのギャップも恐ろしい回として有名です。今の福井県のとある山で修行をしていた3人の尼さんを襲った惨劇の話で、ろくに物を食べられない修行生活のなかで、ある時に空から3つのおにぎりが降ってきたことが物語の発端となります。

 最初は満足してひとりひとつのおにぎりを食べていた尼さんたちでしたが、1日にひとつのおにぎりでは物足りなくなってしまった最年長の尼さんともうひとりの尼さんは、手を組んで一番若い尼さんを殺してしまいました。しかしその日から、おにぎりは2個しか降ってこなくなります。

 その後、年上の尼さんはもうひとりの尼さんも殺してしまいました。すると、もう山のどこにもおにぎりは降ってこなくなります。そして、厳しい冬が訪れ、春がやってきました。そして、ずっと尼さんたちを見守っていたふもとに住む木こりは、山姥のような姿になって山を降りてきた年上の尼さんと出くわします。

 直接的ではないものの、意味深な怖い場面が多々あるエピソードで、「他の尼さんが殺された後、年上の尼さんが妙に大きなたき火をした跡が描かれてるから、他のふたりを焼いて食べたのでは」「殺す前にお経を唱えだすのが怖すぎ」「崇高な理念など欲望の前では無力とよく分かる『人コワ回』」と、いろんな意見が出ています。推理小説的な見方もできる人気回ですが、このエピソードの演出・文芸を手掛けたのが『ぼのぼの』の作者としても知られるいがらしみきおさんというのも衝撃です。

(マグミクス編集部)

【画像】山姥の顔怖すぎ!『まんが日本昔ばなし』で山にいた「怪物」たちを見る(3枚)

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