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『ダンバイン』テコ入れで生まれた名エピソード「東京上空」 自衛隊も全面協力?

80年代ロボットアニメ『聖戦士ダンバイン』の数あるエピソードのなかでも、とくにファンに語られるのが、これまでのファンタジー世界から現実世界で展開される「東京上空3部作」です。その誕生秘話とは。

名エピソード誕生秘話

『聖戦士ダンバイン』 (C)創通・サンライズ
『聖戦士ダンバイン』 (C)創通・サンライズ

 早いもので、私が文芸や設定制作を担当した『聖戦士ダンバイン』も、早くも四十周年。サンライズ(現バンダイナムコフィルムワークス)も、渋谷で記念イベントを開くなど、40年を経た今になっても、そんな話題がいただけることに感謝するばかりです。

 ファンのみなさんの間には「ダンバインならここが好き」というポイントがそれぞれあるでしょうが、自分のなかで思い出深く、また、ひとつのターニングポイントになったな、と思うのは、ダンバインたちオーラバトラーが、バイストン・ウェルというファンタジー世界から、現実の東京の街に現れる話です。

 実際の物語は、本編を見てくださいと申し上げておきますが、そもそも、ファンタジー仕立ての物語であったはずなのに、どうして現実世界をも巻き込むという展開になったのでしょう。

『ダンバイン』では、まず基本の物語の流れは、「プロット」と呼ぶ一種のアイデアのような数行の文章を富野監督が書きます。そして、実際にシナリオを担当する脚本家さんたちは、それを基本において、自分自身のアイデアと物語運びで物語を紡いでくださいます。

 では、どうして富野監督がプロットを書くかというと、それは必ずしも、自分の思った物語を脚本家に書かせたいからなのではなく、当時のサンライズの監督というのは、作品内容だけでなく、外部、たとえばスポンサーや代理店、テレビ局などから出てくる要望や疑問にも、なにがしかの対処をしなくてはならないという宿命があったからでもあります。

『ダンバイン』は、それまでのTVアニメ、特に「ロボットもの」と言われるジャンルでは行われていなかった新たな試みや革新的なチャレンジをしていますが、そのために、視聴者の理解、特に、人気と直結する商品の売り上げにはなかなか繋がらないという側面をもっていました。

 それをなんとかしようと富野監督は、ある日、こういう意味のことを言います。

「実物をらしく作るのがプラモデルの基本。でもオーラバトラーはバイストン・ウェルという架空世界にあるので、すごさや実在感が伝わり難いんじゃないか。一度現実世界に出せば、対比ですごさを実感させられるかもしれない」

 ということは、描く現実世界は出来るだけリアルであるべきだろうと我々は考えました。もし、本当にオーラバトラーが東京の街に現れたらどうなるのか……。もちろん人々は驚くだろうし、壊れる建物も出てくる。警察は大慌てだろうし、空を飛ぶオーラバトラー相手となれば自衛隊も動くだろう……。

 そこで、航空自衛隊の某基地の広報に電話で理由を説明し、取材を申し込むと快諾をいただきました。

【画像】どっちが好き? 後半の主役機・ビルバインを見る(4枚)

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