映画『毒娘』押見修造×内藤瑛亮監督対談 漫画家と映画監督との理想のコラボ【前編】
自分が解放されていく気持ちよさがあった
ーーお互いの作品をどのようにご覧になっていたんでしょうか?
押見:『ミスミソウ』は原作者の押切蓮介さんと僕が友達なこともあって、とても興味深かったです。マンガもすごい内容ですが、あの作品を実写化するのは簡単ではなかったはず。でも内藤監督は、押切さんや同世代である僕が観ても面白いと思える映画にしていましたね。
内藤:押見さんの作品はすべて読んでいて、アニメ化された『惡の華』を含め、映像化された作品も観ています。思春期の鬱屈していた感情が爆発するところは、自分の作品のテーマと近いですし、「分かるなぁ」と感じていました。また、思春期の苦悩を描くだけでなく、大人になってその問題にどう向き合うのかまでしっかり描いている。『血の轍(わだち)』や『おかえりアリス』は、さらに発展させたものになっています。押見さんの作品からは、いつも刺激を受けています。
ーーおふたりのコラボは必然だったようですね。
内藤:まぁ、僕からお願いして巻き込んだ形です(笑)。
押見:いやいや、楽しかったですよ。漫画家って基本的にひとりで仕事しているので、今回は内藤監督とやりとりしながらキャラクターを生み出していく作業は、自分が解放されていくような気持ちよさがありました。文化祭に参加したような楽しさでした。内藤監督との仕事は、僕もすごく刺激的でしたよ。
ーー具体的にはどのような作業だったんでしょうか?
内藤:まず押見さんに脚本を読んでもらい、それから僕のほうから「ジャージを着ていて、髪はボサボサで……」などちーちゃんの大雑把なイメージをお伝えして、押見さんにキャラクター化してもらいました。昆虫の死骸をブローチにしている、靴が左右バラバラなどは、押見さんの発案です。そうした押見さんのアイデアをまた脚本に取り入れて、キャラクターを膨らませています。押見さんとキャッチボールしながら、ちーちゃんを作っていった感じです。
押見:脚本がとても面白くて、ちーちゃんの怖いけれど愛くるしくもある感じが、僕のなかにスッと入ってきました。内藤監督と打ち合わせの席で、「こんな感じですか?」とイラストを描いてみせ、その後も何回か描き直しましたね。
内藤:喫茶店で打ち合わせをしたんですが、目の前でちーちゃんが描かれていくのを目の前で見て「すげぇ!」と感動しました。僕のイメージしていた、ちーちゃんそのものでした。その後、着色もしていただき、ほぼ完成形のちーちゃんになりました。
ーーちーちゃんの目の周りがペイントされている感じは、内藤監督が大好きなマリリン・マンソンを思わせます。
内藤:押見さんには参考になるような画像をいくつかお送りしました。マリリン・マンソンは送っていなかったかもしれませんが、無意識のうちにマリリン・マンソンのイメージが入っていたのかもしれません。
押見:内藤監督からはファッションショーなどの画像は送っていただきましたが、そのなかにはマリリン・マンソンはなかったですね。でも、内藤監督の頭のなかにあるちーちゃん像を具体化していく作業は、今までにない体験で面白かったですよ。