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『ガンダム0083』本当にヤバいアルビオン隊 主人公サイドなのに…どうしてそうなった

OVA『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』はジオン愛にあふれる作品として知られ、連邦軍の軍人たる主人公たちはそのワリをくったといえるでしょう。ただその主人公サイド、じっくり振り返ると相当ヤバい連中でした。

シナプス艦長、反逆罪で極刑! ←やむなし?

ニナ(右から2番目)の悪評にかすみがちですが、コウ(中央)たちもなかなかでした。「機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY vol.1」(バンダイナムコフィルムワークス)
ニナ(右から2番目)の悪評にかすみがちですが、コウ(中央)たちもなかなかでした。「機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY vol.1」(バンダイナムコフィルムワークス)

「ガンダム」シリーズのひとつ『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』は、OVAならではの作画レベルの高さ、主役機「ガンダム試作3号機デンドロビウム」の巨大さとカッコよさもあり、制作から約30年が経ったいまなお高い人気を集めています。

 もうひとつ、鮮烈に記憶されているのは、主人公「コウ・ウラキ」が属する「アルビオン隊」のヤバさでしょう。機動戦艦「アルビオン」艦長の「エイパー・シナプス」は、最終的に極刑とされています。現在の配信映像などには残されていませんが、再編集した劇場版『機動戦士ガンダム0083 ジオンの残光』(1992年)の公開当時、テロップが流れると場内は騒然となりました。

 なんで主人公サイドなのに処刑されているの? 地球連邦軍の内輪もめに巻き込まれ、詰め腹を切らされた悲劇の軍人……ととらえたいところですが、実は劇中でのアルビオン隊の行動は本当にヤバかったのです。

 まず、アルビオン隊に預けられた核バズーカ搭載の「ガンダム試作2号機」を、ジオン残党「デラーズ・フリート」のエース「アナベル・ガトー」に強奪され、総力を挙げて奪還を試みながら取り逃しています。

 しかも、観艦式に襲来した試作2号機を止められず、核を撃たせて目的を達成させちゃいました。

 もっともヤバい行動は、デラーズ・フリート追撃の任を解かれ、「試作3号機」の受領を止められた時から始まります。

 もちろん、軍において上からの命令は絶対です。にも関わらず、コウやシナプス艦長らは反乱を起こし、試作3号機を強奪してアルビオンを発進させます。命令違反だけでもヤバいのですが、試作3号機は軍事機密でもあり、それを外に持ち出すことはもろに「機密の漏えい」そのものです。

 なぜ、反乱まで起こしたのでしょうか。それはデラーズの「星の屑作戦」が、実は月ではなく地球にスペースコロニーを落とす計画だと知ったからです。もしも止められれば結果オーライになったかもですが、コウの目の前でコロニーは「阻止限界点」(絶対に地球への落下を避けられないリミット)を超えてしまいます。

 このとき、連邦軍の上層部の一部(後のティターンズ)も「星の屑作戦」の真の狙いを知っていました。そのため彼らはアルビオン隊に、ジオン残党のひとつで連邦側に寝返っていた「シーマ艦隊」との共闘を命じます。が、コウたちはこれをあっさり無視、かつて仲間の「バニング」を殺した「シーマ・ガラハウ」を串刺しにして葬り去ります。え、そこで私怨を優先しちゃうんだ……。

 阻止限界点を突破された後も、連邦軍は切り札の「ソーラ・システム」を用意していました。コロニーくらい爆砕できるはずでしたが、ガトーの駆る巨大モビルアーマー「ノイエ・ジール」は悠々とコントロール艦を破壊し、無効化に成功します。コウ、シーマにかまう時間があればソーラ・システムを防衛できたのでは……?

 トータルで見れば、アルビオン隊は「正義」で動いていたとは言いがたく、シナプス艦長の振る舞いもガチに反逆罪に当たっている印象があります。が、コウは懲役1年と軽すぎる上に、ガンダム試作機がすべて「なかったこと」にされたため、罪状も消滅しました。コウ・ウラキ少尉、ラッキーボーイすぎません?

 その結果、『0083』はガンダムシリーズ史上でも1、2を争うお子様置いてけぼり、主人公サイドの正義って何なの? と腕組みする野心作になっているのです。

(多根清史)

【画像】幻の4号機も…こちらが「ガンダム試作●号機」と呼ばれる「GPシリーズ」の機体です(7枚)

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