マグミクス | manga * anime * game

『Vガンダム』主役機の変形・合体はどう復活した? 合理的な理由にいたる逆転の発想

『ガンダム』の「宇宙世紀」シリーズの主役機というと、初期は合体や変形のギミックがあったものの、いったん廃れ、そしてもっとも時代の下った『Vガンダム』で復活しています。そこには逆転の発想から生まれた納得の理由がありました。

脆くて強くない量産機、苦しい台所事情から生まれた変形・合体ガンダム

「U.C.ガンダムBlu-rayライブラリーズ 機動戦士Vガンダム I」ビジュアル (バンダイナムコフィルムワークス)
「U.C.ガンダムBlu-rayライブラリーズ 機動戦士Vガンダム I」ビジュアル (バンダイナムコフィルムワークス)

『機動戦士Vガンダム』の主役機「V(ヴィクトリー)ガンダム」は、「ガンダム」シリーズにおける「主役機の変形・合体」を、『機動戦士ガンダムZZ』以来、実に6年ぶりに復活させました。初代「ガンダム」と同じく3機合体であり、トップ・リム(上半身、Aパーツ、ハンガー)とボトム・リム(下半身、Cパーツ、ブーツ)が変形してコア・ファイター(Bパーツ)を強化する方式は非常に分かりやすくあります。

 その一方で放送前は、当時ブームとなっていたSDガンダムにデザインを寄せつつ、各地を巡ってパーツを集めるRPG要素も取り入れるなど、子供に歩み寄ってガンダムファンの若返りを図っている、ともいわれました。変形・合体は「強そう、カッコイイ、分かりやすい」を目指すものと思われていたわけです。

 が、実際に登場したVガンダムはそのイメージとは程遠く、それでいて変形・合体する意味に満ち満ちていました。

 Vガンダムは、歴代の主役ガンダムのなかでは初の「量産機」で、地球圏に侵攻した「ザンスカール帝国」への抵抗組織「リガ・ミリティア」が独自に開発したモビルスーツ(以下、MS)です。地球連邦軍があまりにやる気がなく、また量産型MSをアップデートしないため、自前で用意せざるを得なかったわけです。

 草の根の組織が政府の力を借りずに作ったもので、しかも資源が乏しいなか数を用意する必要があり、1体ずつを超高性能にできるわけがありません。たとえば、主人公の「ウッソ・エヴィン」が最初に鹵獲したザンスカールのMS「シャッコー」は出力が5190kWありますが、Vガンダムは5000kW未満です。

 変形・合体も、そうした「弱さ」から出てきたものです。AパーツとCパーツは各地の町工場で作れる程度の技術レベルで、構造的にシンプルで強度も高くできません。その代わり量産はしやすく、壊れても行く先々で補給を受けられるため、手足をぶっ壊されては各地の工場で受け取って付け替える展開となりました。

 逆にコア・ファイター(Bパーツ)は、ほとんど補給が受けられない貴重品です。出力を生み出すジェネレーターやメインカメラ、空を飛ぶミノフスキー・クラフトなど主要機器を満載しており、ここさえ被弾しなければ大したダメージもありません。また被弾は「主人公が退場」とほぼイコールなので、無傷でやり過ごすのはドラマ的にも自然です。

 そのような苦しい台所事情から生まれた変形・合体は、結果としてVガンダムを非常にトリッキーな機体としました。「戦闘機が人型に変わる」ことや「腕や足を破壊したはずが、フツーに戦い続ける」こと、さらには「新手が来たと思ったら、単なるボトム・リム」など、敵にとっては紛らわしくてたまりません。

 その強みを最大限に引き出したのがウッソでした。戦闘中に手足をやられても味方から補充されてすぐに復帰、分離したパーツと合体して敵の不意を突いたり、挙句はありったけの「ブーツ」を敵に特攻させて押し切ったり、機体の性能というよりギミックをフルに活かしきっています。

 一般的なロボットアニメでは、3機が変形・合体すると3倍強くなるといったパワーアップ要素が見られるものですが、Vガンダムは「中核となるパーツ以外は壊れやすく、替えが効く」という逆転の発想です。主役メカの「弱さ」を変形・合体で補う戦い方は抜群に面白く、独特すぎるため、後に続く作品は出てこないかもしれません。

(多根清史)

【画像】いきつくところは「全部のせ」こちらが『Vガンダム』主役機の一部です(4枚)

画像ギャラリー