『ガンダム』の「ドム」が大発明かもしれないワケ ロボットアニメに見るその福音
個性派揃いの『ガンダム』のMS(モビルスーツ)のなかでも、特に多くの作品に影響を与えたと思われるのがドムです。確かに特徴的なメカですが、それ以外にも大きな魅力があるのです。
「ドムの系譜(影響)」はシリーズ作品外にも…?
ロボットアニメの金字塔として名高い『機動戦士ガンダム』には、主役機の「ガンダム」以外にもロボットアニメ史のマスターピースとなる傑作MS(モビルスーツ)が多数登場します。そのなかから「ドム」について見ていきましょう。
●あまりにも特徴的なデザイン
ドムがはじめて『機動戦士ガンダム』に登場したのは第24話「迫撃!トリプル・ドム」のエピソードです。体格のいい剣道家のようなフォルムに縁取り付きの十字のモノアイという特徴は、その後に多くの後継機を生みました。
TVアニメだけでも「リック・ドム(『機動戦士ガンダム』)」「ドワッジ(『機動戦士ガンダムZZ』)」「ドライセン(『機動戦士ガンダムZZ』)」「ドム・トルーパー(『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』)」などが登場しています。MSV(モビルスーツバリエーション)や各種派生マンガ、ゲームなどを加えればドムの系譜はさらに充実するでしょう。ドムにはどの後継機、派生機をみても十字のモノアイなどからわかる強烈な個性があります。
しかしドムの偉業はデザインだけではありません。ロボット描写における大きな発明を残しています。
●ホバー移動という大発明
ドムの脚部はひざ下が末端に行くにつれて太くなる、ベルボトムや袴のようなデザインをしています。これは重量感のあるメカのデザインとして秀逸ですが、動かすと問題が生じます。プラモデルを作ったことのある方ならすぐにわかるでしょうが、末端肥大の足は立っているときは迫力があってポーズが決まるものの、動かすとヨチヨチ歩きになってしまいダサいのです。
そうしたこともあってかドムは、足を固定したまま滑るように素早く移動するホバー移動をしています。滑るように3機のドムが迫ってくる演出は迫力があり、太い脚部が動かないことに設定的な説得力があります。
このホバー移動は巨大ロボットの大発明だと思われます。その後の『ガンダム』シリーズだけでなく、多くのロボットアニメでも見られました。走る作画をしなくていいので省力化でき、しかも水平に素早く移動するのでアクションの見栄えがするからだと思われます。
●ホバー移動とローラーダッシュ
『ガンダム』の放送終了から約4年が過ぎた1984年に、アニメ『装甲騎兵ボトムズ』のTV放送が始まりました。作中で登場するAT(アーマードトルーパー)には、足に装着された車輪で滑るように移動する機構「ローラーダッシュ」が備わっています。
また『コードギアス』のKMF(ナイトメアフレーム)も、脚部のローラーで高速移動し、地形を駆け上がる立体的な格闘を見せてくれました。
ほかにも巨大ロボットが足を動かさずに水平移動している演出(足裏からジェットが噴出する、自動車形態に変形するので足の車輪を人型の時も利用する……など)を取り入れている作品は数多くあります。
ロボットが足を動かさず(作画を節約して)水平移動するという演出の起源は、『ガンダム』以前に制作された作品かもしれません。しかしドムのホバー移動以降に同様のアイデアが多数生まれていることから、ドムの影響力の大きさは否定できないでしょう。
ATやKMFに代表されるような水平移動するメカは、演出面ではドムの系譜なのかもしれません。
(レトロ@長谷部 耕平)