食わず嫌い多し?『ノイエ銀英伝』 原作や石黒監督版アニメとの違いも面白い
『アルスラーン戦記』『創竜伝』などでも知られるベストセラー作家・田中芳樹氏の超人気スペースオペラ『銀河英雄伝説』を再びアニメ化した『銀河英雄伝説Die Neue These』が2020年4月6日からNHK Eテレで放送中。原作や石黒監督版アニメのファンだからこそ気付けて楽しめる、本作ならではのこだわりや魅力を紹介します。
累計1500万部越えのスペースオペラ『銀英伝』、2度目のアニメ化
人気作家・田中芳樹氏の代表作で、第1巻が発売された1982年から現在までのシリーズ累計発行部数は、1500万部以上という超人気SF小説『銀河英雄伝説』(以下、銀英伝)。1988年からスタートしたアニメ化プロジェクトは約12年続き、長篇3作と、OVA(オリジナルビデオアニメ)全162話(本伝110話、外伝52話)が制作されました。さらに、2018年には『銀河英雄伝説Die Neue These(ディ・ノイエ・テーゼ)』(以下、『ノイエ銀英伝』)として、2度目のアニメ化プロジェクトもスタート。まさに世代を超えて愛され続けてきた作品で、4月6日からは『ノイエ銀英伝』のファーストシーズンとセカンドシーズン(全24話)がNHK Eテレで放送中です。
前回のアニメ化から年月が経過していることもあり、新たなスタッフやキャストにより制作されている『ノイエ銀英伝』。当然、ビジュアルやキャラクターの声などは、故・石黒昇監督(総監督)らが制作した最初のアニメとは異なっています。しかし、違いは、そういった表層的なことだけではありません。作品の随所に、多田俊介監督をはじめとした新たなスタッフによる新解釈やこだわりもつまっているのです。
例えば、第2話の初放送時、主人公のひとりで自由惑星同盟軍の英雄であるヤン・ウェンリー(CV:鈴村健一)の補佐役が比較的地味なキャラのラオ(CV:畠中祐)だったことは、一部の『銀英伝』ファンの間で話題になりました。石黒監督版で、その役割を担っていたのは人気キャラのダスティ・アッテンボロー(CV: 石川界人)だったからです。しかし、実は、原作でアッテンボローの名前が初めて登場するのは第2巻。しかも、ヤンの命令を説明する記述のなかに名前があるだけで、実際に活躍する姿が描かれるのは第3巻から。石黒監督版では、ラオの役割を割り振ることで、原作でも後に重要なキャラとなるアッテンボローの登場を早めていたと考えられます。そのため、原作を通っていない石黒監督版のアッテンボローファンからは不満の声もありましたが、事情を知るファンには、石黒監督版のリメイクではなく、あくまでも小説を原作として新たにアニメ化するという『ノイエ銀英伝』のスタンスが早々に伝わりました。