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間に合いませんでしたが上映します←ん? 未完成なのに“そのまま上映”されちゃったアニメ映画

世の中にアニメ映画は数あれど、「未完成のまま公開に踏み切った作品」というのはなかなかあるものではありません。ハイクオリティな作品が次々と生み出される令和ならなおさらですが、ひと昔前、今から20年以上も前のアニメ映画界には、そんな前代未聞の作品がちらほら見受けられました。

「EVA量産機」が上空旋回←えっ、ここで終わり?

画像は『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』DVD(キングレコード) (C)カラー/EVA製作委員会
画像は『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』DVD(キングレコード) (C)カラー/EVA製作委員会

 アニメ映画が従来のスケジュール通りに完成しなかった……というケースは、まれに存在します。例えば、アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』の新作映画『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ<ワルプルギスの廻天>』は、もともと2024年冬に公開予定だったところ、「制作上の都合」により2025年冬に公開されることが決定しました。

 このように制作が間に合わなかった場合は、公開日の延期という判断が下されるものですが、世の中には「未完成」なのに公開してしまった前代未聞の作品も存在するのです。

 1997年に公開された『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』は、その代表例ではないでしょうか? 多くの謎を残したまま終了したTVアニメの物語を補完するために作られたこの作品は、もともと第1話から第24話までを再編集した「DEATH」編と、第25話以降の物語をリメイクした「REBIRTH」編で構成される予定でした。

 ところが「REBIRTH」編の完成が間に合わないことが判明し、公開の約1か月前に緊急記者会見が実施されます。そこで庵野秀明監督が謝罪を行い、公開日には「DEATH」編と完成途中の「REBIRTH」編を公開することが告知されました。

 こうしてお披露目された『シト新生』は、戦略自衛隊を蹴散らした「アスカ」と弐号機のもとに、9機の「EVA量産機」が投下され、上空を旋回するシーンで幕を閉じます。弐号機と量産機の戦いは描かれず、「私に還りなさい~」と主題歌の『魂のルフラン』が流れ、そのままスタッフロールへと入るのです。ここで帰らされる観客の気持ちと来たら……今でも鮮明に覚えている人も多いのではないでしょうか?

 また1999年に公開された『GUNDRESS(ガンドレス)』も、未完成のまま公開されたアニメ映画のひとつです。同作は西暦2100年の「ヨコハマ・ベイサイドシティ」を舞台に、銃やロボットで武装した警備チーム「エンジェル・アームズ社」の活躍を描いたSFアクションとなっています。

『攻殻機動隊』の士郎正宗先生が設定協力で参加するなど、アニメファンから大いに期待された作品でしたが、制作が公開日に間に合わずそのまま封切りとなりました。このことは各新聞でも報じられ、公開初日の映画館では「誠に残念ながら不完全な形で公開せざるを得なくなりました。深くお詫び申し上げます」「ご覧いただく方は、複数箇所に不完全な部分があることをご納得の上、ご入場ください」といった内容のプリント用紙が観客たちに配られたそうです。

 そんな前代未聞の対応がとられた『GUNDRESS』は、いったいどのような出来だったのかというと、まず動きがぎこちないのは序の口で、セリフと効果音が動画と合っていなかったり、線画だけの部分や色がついてない部分も多く見られたり……。たとえ色が塗ってあっても単色塗り、といったような出来栄えでした。色分けされていないメカたちを見て、「キン肉マン消しゴム」が脳裏をよぎった人も少なくないでしょう。

 もはや作画崩壊の域を超えたクオリティだったため、観たくない人には前売り券代の返金が行われ、お金を払って観た人には後日完全版ビデオが送られるなどの対応がとられました。そして今なお『GUNDRESS』は伝説の未完成映画として語り草となっており、ネット上には「ガンドレスを超える衝撃には、いまだに出会えていない」「未完成どころの話ではなく、画面で何が起こっているのか分からないレベルだった」などの声が見受けられます。

(ハララ書房)

【画像】エヴァ弐号機を捕食する姿のおぞましさといったら! こちらが多くのファンにトラウマを植えつけた「EVA量産機」です

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