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『ゼルダの伝説』『謎の村雨城』どこで差がついた? ディスクシステム初期の二枚看板

『ゼルダの伝説』(1作目)と『謎の村雨城』は、ディスクシステム初期の二枚看板といえるでしょう。しかしながら、その後の展開には大きく差がついてしまいました。どのあたりに要因があったのでしょうか。

洋風と和風だけじゃない、実は大きく異なるその中身

ディスクシステム初期の二枚看板のひとつ『謎の村雨城』。画像はYouTube Nintendo 公式チャンネル「謎の村雨城(ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online)」より (C)1986 Nintendo
ディスクシステム初期の二枚看板のひとつ『謎の村雨城』。画像はYouTube Nintendo 公式チャンネル「謎の村雨城(ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online)」より (C)1986 Nintendo

 ファミコンの周辺機器である「ファミリーコンピュータディスクシステム」(以下、ディスクシステム)は、39年前の今日、1986年2月21日に発売されました。従来のROMカセットと比べて数倍の容量を持つディスクカードを採用し、大きな可能性を秘めていると期待を集めたものです。

 初期におけるビッグタイトルといえば『ゼルダの伝説』(ディスクシステム本体と同時発売)と『謎の村雨城』(4月14日発売)のふたつでした。ほかは『ゴルフ』や『サッカー』など旧作からの移植で、『スーパーマリオブラザーズ2』(6月3日発売)はトラウマ級の難易度であり、8月6日の『メトロイド』までは二択だったのです。

 が、今や『ゼルダ』は超メジャーに対して『村雨城』はカルト作に近い扱いです。販売本数は約169万本に対して61万本だったとはいえ、かたやシリーズ化されて大ヒットを連発、もう一方は続編も出ていません。いったい、どこで差が付いたのでしょう。

 これら2本は、一見すればソックリです。どちらも上から見たトップビューで、固定画面の端に達すると次の画面に切り替わる方式を採用しています。主人公は4方向に移動でき、Aボタンで攻撃、Bボタンで特殊アイテム(忍術など)を使う操作方法も共通です。

 が、中味の方向性はまるで正反対です。『ゼルダ』は西洋ファンタジー風の世界で、広大なフィールドを冒険して謎を解き、ダンジョンも順序が固定されず、どこから攻略するか選べる自由度の高さです。

 対して『村雨城』は和風の世界観でアクションゲームに徹しており、各城の道中と城内ステージを順に攻略して最奥部にいるボスを倒すというシンプルな構造で、謎解き要素はありません。特定の場所に隠しアイテムやパワーアップはありますが、単純にアクションを助けるものです。

 こうした真逆の作りは、どちらも「スーパーマリオ」シリーズの生みの親である宮本茂氏が、ほぼ同時期に開発に深く関わったためでしょう。それぞれ和風と洋風、アクションアドベンチャーとアクションゲーム、と、被らない配慮がうかがわれます。ちなみに、両作とも音楽は近藤浩治氏によるものです。

 そして『村雨城』は、和風のグラフィックや軽快な楽曲にも独特の雰囲気があり、ボスキャラクターたちもデザインに味があり、高水準にまとまっていました。なのに、なぜ兄弟作の『ゼルダ』ほど多くの人に愛されなかった(販売本数が及ばなかった)のでしょう。

 その理由は、ひとえに「難しすぎる」ことです。主人公「鷹丸」は4方向しか動けないのに、ザコ敵が至るところに出現して攻撃が激しく、異常に避けにくいのです。しかも鷹丸のHPは3しかなく、成長もしないため、あっという間に残機を失ってしまいます。さらにマップがだだっ広くて迷いやすく、時間制限もあり、下手をすれば最初のステージで詰むこともあり得ます。

 それでも、当時60万人以上に愛された事実は揺るぎません。後年、コーエーテクモの『戦国無双3』に、「謎の村雨城モード」が追加されたことが証明となっています。

「任天堂も続編を作っていないのに、なぜ他社が?」と思ったら、発表イベントで宮本茂氏ご本人が登場し、プロデューサーの鯉沼久史氏から直訴され「気持ちよく遊べるゲームにしてくださいね」と許諾したことを明かされていました。

 それから数年後、コーエーテクモから『ゼルダ無双』が発売され、さらに前日譚『ゼルダ無双 厄災の黙示録』も全世界で累計出荷400万本を突破する大ヒット作となっています。『ゼルダ』と『村雨城』、どちらも愛されていたからこそのハッピーな展開ですね。

(多根清史)

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