ファミコン「ディスクシステム」のザンネン豆知識 一度も使われない「謎の端子」があった?
39年前に発売された「ディスクシステム」は、多くの子供たちが憧れるのに十分な機能と魅力を備え、数々の名作シリーズもここから生まれました。ただ、あとになってわかることですが、この周辺機器にはザンネンな部分もあったのです。
「えっ」 初めて体験する「ロード」の待ち時間

39年前の今日、1986年2月21日は、ファミリーコンピュータ(ファミコン)向け周辺機器「ディスクシステム」が発売された日です。それまでのゲームカセットよりも大容量の「1M(メガ)ビット」を備え、プレイ内容をディスクに保存でき、玩具店などでたった500円で新しいゲームに「書き換え」ができるなど、さまざまな新機軸が盛り込まれました。
そのような新しいメディアで、『ゼルダの伝説』『悪魔城ドラキュラ』『メトロイド』など、後世に知られる名作シリーズが生まれました。ファミコン本体とほぼ変わらない1万5000円という価格で、簡単に手が出せるものではありませんでしたが、ファミコンに夢中だった子供たちが憧れた周辺機器だったのです。
ところが、この「ディスクシステム」には、今振り返れば「ザンネン」だった部分もありました。
そのひとつが、当時の子供たちが初めて体験した「ロード」の待ち時間です。ゲーム開始時やステージクリアなどのタイミングで、データの読み込みで一定時間待たされるという体験は、近年のゲーム機やスマーフォトンゲームなどでもあることですが、それまでのゲームカセットでは体験したことのないロード時間に困惑した子供たちも多かったと思われます。
もちろん、一部にロード時間はあっても軽快に動くゲームはありましたが、なかには頻繁にロードが行われ、いっこうにゲームが進まない……という作品もありました。近年のゲームではロード中の画面に「攻略のヒント」や「アニメーション」などが表示され、プレイヤーを退屈させない仕掛けもありますが、当時のディスクシステムのゲームは、ほとんどが真っ黒な画面に「NOW LOADING」などのメッセージが出るだけだったので、このロード時間は子供たちにとって楽しくない瞬間でした。
全く使われなかった「謎の端子」があった?

ディスクシステムを使用する際には、付属の「RAMアダプタ」をファミコン本体に接続してディスクのデータを読み込むのですが、そのRAMアダプタに、別の周辺機器を接続するための端子があったことを、皆さんは覚えているでしょうか?
その「謎の端子」はRAMアダプタ後方にあり、スライド式のシャッターで覆われていたため、気づかなかった人もいるかも知れません。この端子と接続されるはずだった周辺機器は、実は構想がありながらも発売されなかったのです。
その周辺機器とは、任天堂が構想していた「ファミリーコンピュータ・ネットワークシステム」の通信アダプターでした。そのシステムを使って、ゲームソフトのダウンロードやアニメーションの手紙の送受信、学習や株式などの情報サービスなどが利用できる……といった内容が、当時のチラシにうたわれていました。
結局、ディスクシステムと接続する通信アダプターは発売されず、謎の端子だけが残ったわけですが、のちにファミコン本体と接続する周辺機器が発売され、株式の売買や馬券の購入などのサービスが提供されました。
大容量、高性能カセットに押されてフェードアウト?
発売当時は「1M」の大容量を誇り、それまでのゲームカセットにはない機能で優位性があったディスクシステムでしたが、ほどなくして2M、4Mといった大容量のカセットが登場し、カセット内部の回路でゲームデータを保存するバックアップ機能を備えたものも発売されました。もともと、カセットは長いロード時間を必要としないことから、当初のディスクシステムの優位性は失われていきました。
結局、ファミコン向けに発売されたゲームカセットのタイトル数「1053本」に対し、ディスクシステム向けに発売されたのは「199本」(カセットで発売済のものをディスクシステム向けに収録したものも含む)にとどまり、長く遊ばれた周辺機器とはいえないかもしれません。
「ザンネン」な部分もあったディスクシステムですが、ファミコンの歴史のなかでは大きな意義もありました。『ゼルダの伝説』をはじめとする名作ゲームが次々と生み出される一方で、かなり尖ったコンセプトのゲームも数多く発売されていたのです。
音楽ゲームの要素を融合したシューティング『オトッキー』、クセの強いシステムが記憶に残るシミュレーションゲーム『19(ヌイーゼン)』、アイドルの立花理佐を題材とした『リサの妖精伝説』、「野球拳」でヒロインが服を脱ぐという伝説の「ウソ技」が生まれたアドベンチャーゲーム『水晶の龍』など、作り手の意欲的なチャレンジやアイデアが詰まったゲームを、たった500円の「書き換え」で気軽に遊ぶことができました。
ディスクシステムについては、意外と「チャレンジングなゲームが楽しかった」という思い出を持っている人も少なくないのではないでしょうか。
(マグミクス編集部)