あいつぐ無断転載に「やるせない思い」　業界人も重宝する「アニメ@wiki」有料化決断の背景【管理人に聞く】

膨大なデータの更新作業と有料化への想い

●ページ数4万2000以上。延々と続く地道な作業

　自身も言うように「地道な作業」を17年続けた結果、現在はサイトのページ数が4万2000を超えました。

「気付けばそんな規模になっていましたね。サイトを始めた時代とは変わり、最近では各話数に関わる作画監督様の数もひとりやふたりの頃と比べて10～20人規模も珍しくないほど大幅に増え、本当に時間が足りない毎日です。生活時間のうち、食事やトイレ、入浴や僅かな休憩時間を除いたほぼすべての時間をwikiへの編集作業に全力を注いでいます。おかげでアニメ本編を観る時間が食事の間しかないのが悲しいですが……。

　編集者を増やせばいいのかもしれませんが、そこは単なる私の性分というかワガママで、どなたかに編集していただいても正確性や書式の整合性を保つために必ず自分で監修したくなりますし、私の作ったルールを押し付けて他の方の気分を害するのも嫌なんです。私が生きている間は他の誰かが編集することはたぶんないのではないでしょうか。AI技術が仮に発展しても自分の詰めたい情報が望む形で整理されるとは限らないし、効率化という点ではOCR（画像からの読み取り機能）を一部の中国語や韓国語でのお名前を書き起こすために取り入れている程度です。こればかりは私のほうで調べても書けないので助かっています。

　おかげさまで最近はPVが1日あたり平均1万4000前後ありますが、収入は本当にボランティア程度。それは日々の更新作業で手一杯で、広告やマネタイズまで頭も手も回らない私の責任でもあります。でも日々放送されるアニメを作ってくださる方々の情報がただ流れてしまうことに危機感を抱いて運営を続けているのも大きいので、このサイトが役に立ったという話を見かけたりするのがうれしくて、モチベーションになっています。」

●無断転載への思いと有料化への決断

　有料化の理由はケンジさんのpixivFANBOXに詳細が語られています。改めて話を聞くと無断転載に対するやるせない思いが強く伝わりました。

「自分が長い年月かけて作ったものが、丸々コピーされたりするのを見てしまうと『自分がやってきたことって何だったんだろう？』『長年かけて情報をまとめても一瞬でコピーされ、いま編集しているこのページもまた別サイトがコピーするために作ってるのか』と本当に絶望してしまい、サイトを閉鎖しようと思ったことも一度や二度ではないです。

　しかしながら今という時代なら情報の有料化に対して障壁は低いと考え、苦渋の決断でしたが有料化へと踏み切りました。無料で使えたものが有料化することに否定的な意見をもっといただくと思っていましたが、ほぼ目にしなかったことに驚きました。また視聴者だけでなく業界関係者から多くの賛同を表明していただけたのが意外で、とても心強かったです」

　最後に新たなフェーズに突入した「アニメ@wiki」の今後について尋ねてみました。

「まず健康第一で、変わらず続けられることが一番です。1時間も座っていられないほど腰の状態が悪く、最近はまともに外出もできていないくらいなので。また有料化発表時には知人から『制作会社などアニメ関係の会社にスポンサーしてもらったら』という意見をいただいて。ただのアニメファンが始めたサイトに企業が協力してくださったら……そう考えるのもおこがましいですが、実現したらオタクとしては胸アツですよね。

　せっかくの機会なのでこの場を借りてお願いしたいのが、公式サイドで話数クレジットのweb掲載がもっと一般的になればと思います。もちろん『ご本人の許可を取ったうえで』が第一なのですが、最近の流行であるアニメーションMVの概要欄などを見ていると掲載自体が不可能なわけではないんでしょう。今回の発表への反響で、クレジットを大切に考えている皆さんの声を改めて実感できましたし。」