91歳の巨匠わたなべまさこ コロナ禍のなか1人で描き上げた新作が教えてくれること
少女マンガ界の巨匠、わたなべまさこ先生は、2020年4月からマンガアプリ「マンガMee」で新作を連載したばかりですが、早くも新連載『中国怪異譚 朱い紐』が始まりました。91歳の現在も尽きることない創作力が私たちに教えてくれることは……?
絵本出版、マンガアプリ連載に続く新作連載
新型コロナウイルスの影響がマンガ制作の現場にも及ぶなか、少女マンガの巨匠・わたなべまさこ先生が新作を描き上げて注目を集めています。少女マンガに詳しい芸人の、別冊なかむらりょうこさんが解説します。
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わたなべまさこ先生は、1929年生まれの現在91歳。1952年に貸本出版社より『小公子』を刊行しデビューされ、1950年台後半より多数の少女マンガ誌で作品を発表。日本少女マンガ界の草分けとなり、2002年に日本漫画家協会賞として全作品に対する文部科学大臣賞を受賞。2006年には旭小綬章を女性漫画家として初めて受賞しました。
代表作には、1970年小学館漫画賞受賞作品『ガラスの城』や、宝島社から2017年に再刊行され大きな話題となった『聖ロザリンド』などがあります。また現在においてもその創作意欲は止まらず、デビューから68年たった今も新作を発表し続ける、創世記時代から活躍する数少ない漫画家のひとりです。
ここ最近の作品では、2019年には、初の絵本『中国怪奇絵巻 妖の絵本』を刊行。2020年4月から6月までは、集英社のマンガアプリ「マンガMee」にて、全14話の『秘密ーひめごとー』を連載したばかりです。
そして今回、双葉社「JOUR 素敵な主婦たち」7月号にて、『中国怪異譚 赤い紐』のシリーズ連載をスタートされたのです。
この1~2年でこの作品数。私たちがイメージする91歳像とはかけ離れていますね……。わたなべ先生の68年間という漫画家歴にも驚かされますが、何より、新しいことを取り入れ続ける先生の意欲に感服してしまいます。
マンガというフォーマットを飛び出し、絵本に挑戦されたり、紙媒体ではなく、マンガアプリで連載されたり。
そして今回の『中国怪異譚 赤い紐』は、昨年『中国怪奇絵巻 妖の絵本』を出版された際に、「最近はずっと絵本を描いていたから、久しぶりにマンガが描きたいわ」と発言されたことから実現した企画とのこと。
「最近はずっと絵本を描いていたから」に続く言葉は、「ちょっと休みたいわ」ではないのでしょうか……。作品を作ることによって、また新たな作品が作られていくという、芸術的流れです。
なおかつ、新型コロナウイルス蔓延のなかでの執筆となったため、「密」を避けるためにアシスタントさんたちを一切呼ばずに、全てひとりで仕上げたとのこと。その枚数、なんと40ページ……!