『ガンダム』「坊やだからさ」は誰のこと? シャアとガルマふたりの「青さ」が話題
『機動戦士ガンダム』の有名なセリフのひとつ「坊やだからさ」の「坊や」は、本当にガルマのことでいいのでしょうか。ファンのあいだで語られてきた別の解釈を振り返りつつ、シャアの本心に迫ります。
有名なセリフに隠された複雑な感情

マグミクスは2025年10月6日、「『ガンダム』ガルマは『二度殺された』といわれるワケ 親友と兄貴ふたつの『裏切り』」と題した記事を配信しました。アニメ『機動戦士ガンダム』における「ガルマ・ザビ」の戦場での死と、「ギレン・ザビ」の演説による「個人としての死」を取り上げたこの記事に反響の声が寄せられています。
注目を集めたのは、「シャア・アズナブル」の「坊やだからさ」という有名なセリフです。ギレンの演説の一節「諸君らが愛してくれたガルマ・ザビは死んだ。なぜだ!?」に対するもので、シンプルにガルマのことを「坊や」と言っているように思われる一方、ファンのあいだでは別の解釈も語られています。
ご存じのように、ガルマは「坊や」「甘ちゃん」と評されてもやむをえない部分がありました。「司令官自ら前線に出た事に爆撃なら高高度から行う常識を無視したり索敵に母艦で低空飛行など危険極まる行動しまくってます」というコメントが示すように、戦術面での未熟さは否定できないでしょう。「部下に討伐を任せていれば良かったのに一兵卒の真似事なんかするから」という指摘もあり、ホワイトベースへの固執が命取りとなりました。
一方でガルマはあの若さで、政才の片鱗やカリスマ性も見せていました。「コロニー落としをやらかした張本人一族の一員なのに被害にあった占領地の有力者とうまくつきあって比較的平穏に統治している」という指摘にあるように、確かに、憎悪の対象となってもおかしくない立場でありながら、現地の女性から恋心を持たれるほどの関係を築いています。「人気を得ることは上手いから政治家としてはたいした人材だった」という評価も聞かれました。
ただ、ガルマが若すぎたのも事実です。「年齢的にも20歳前後 今の日本で考えると大学生の年齢」という指摘のとおり、彼はまだ経験を積む途上にありました。もう少し時間があれば、優れた指導者になったかもしれません。
一方で「坊やだからさ」については、ファンのあいだで「シャアが、青い復讐心に駆られ友人を殺してしまったことを自嘲して言っている」という解釈も聞かれ、記事へのコメントでも挙げられていました。なるほどこの解釈だと、あのシーンにおけるシャアの複雑な表情にも納得がいくというわけです。シャアはどこか虚しそうで、ずいぶんと沈んだ様子でした。
確かにシャアは「君は良い友人だったが、君の父上がいけないのだよ」と、そして後にキシリアを殺害する際「ガルマ、私の手向けだ。姉上と仲良く暮らすがいい」とも言っています。これを、ガルマとの関係が表面上だけのものではなかったとする根拠のひとつという見方もあり、「ガルマを憎くて死に追いやったのでなく、復讐のためには必要と、そして殺したという自覚があった」との声も聞かれました。シャアは時が経つにつれ、後ろめたさを感じ始めていたのかもしれません。
そう考えると、「ガルマを『坊や』呼ばわりするシャアも結構青臭かったりするから好き」というコメントは、的を射ているように思えます。ガルマもシャアも、どちらも20歳前後の若者でした。「まさに『認めたくないものだな。若さゆえの過ちと言うものを』だ」というコメントも見られます。復讐という大義名分と友情の板挟みになったシャアもまた、青臭い「坊や」だったのでしょう。
(マグミクス編集部)