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【追悼】『ベルセルク』の三浦建太郎氏、「ハッピーエンドで終わる」と語っていた…

『ベルセルク』が遺してくれたもの

2021年9月に開催予定となっている「大ベルセルク展」(池袋サンシャインシティ)のキービジュアル(画像:白泉社)
2021年9月に開催予定となっている「大ベルセルク展」(池袋サンシャインシティ)のキービジュアル(画像:白泉社)

 いま、『ベルセルク』を読み返してみれば、描き込まれた絵のクオリティが尋常ではありません。繊細かつ豪快、緻密にして荘厳といった、本来であれば相反する要素を兼ね備え、1枚1枚がそれぞれ絵画のような独立性を保ちながらも、マンガとしてガッツリとして繋がり、なおかつ動きがあるという、さまざまな矛盾を取り込みながらも完全に成立している奇跡のような絵なのです。

 三浦先生の才能を執念で練り固めたような絵が数百枚も掲載されている単行本は、1冊わずか数百円。たったこれだけのお金で、どれほど貴重なものを見せてもらえたのか、どれほど豊かな感性を育んでもらえたのか、三浦先生が与えてくれたものの大きさに、あらためて気づかされます。三浦先生の影響を受けたクリエイターは極めて多く、SNSでその死を悼む声が無数に見られたのは当然と言えるでしょう。

 そして『ベルセルク』を語る際に、多くの人が挙げるのが数々の名言です。

 筆者にとって特に印象深いのが、「生誕祭の章」で押し寄せる魔物を前に祈ろうとするファルネーゼに向けて放った「祈るな!! 祈れば手が塞がる!! てめエが握ってるそれは何だ!?」という台詞で、この言葉を知って以来、神社に行っても神様に何かをお願いするのではなく、「自分は何々をします」と決意を伝えるようになりました。

 そしてもうひとつが、「ロスト・チルドレンの章」のクライマックス、ここではないどこかに連れて行って欲しいとせがむジルに対して語った「逃げ出した先に 楽園なんてありゃしねえのさ」という言葉です。社会に出ると、どこにいても何らかの形で戦わなければいけません。安易な逃げは、状況を悪化させることもしばしばです。

 三浦先生は、人生に必要なとても大事なことを、いくつも教えてくれた大事な存在でした。『ベルセルク』はそんな作品でした。人生の3分の2を、ともにあった作品でした。

「ベルセルク、まだやってるんだっけ?」
「こないだキャスカ復活したわ」
「まだ続いてたんだ。本当に最後まで終わんの?」

 友人とのこんな会話を、これから先何年も、完結までずっと続けていきたかった。改めて、三浦先生のご冥福をお祈り申し上げます。

(早川清一朗)

(C)三浦建太郎(スタジオ我画)/白泉社

【画像】過酷な運命のなかで生きる、『ベルセルク』登場人物の関係性(5枚)

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