夏の恐怖体験!『ウルトラQ』のホラーエピソード。モノクロでも不気味さが際立つ?
『ウルトラマン』に先立って1966年に放送された特撮番組『ウルトラQ』は、現代の特撮作品とは違ったテイストが満載です。作品全体が不気味でミステリアスな雰囲気に包まれているも魅力のひとつです。この夏はモノクロホラーともいえる『ウルトラQ』を鑑賞して過ごすのはいかがでしょうか。
怪獣に対処できるのは「人間」しかいない世界
1966年に放送され、未だ熱狂的ファンを持つ特撮作品『ウルトラQ』は鑑賞済みでしょうか。国内初の特撮テレビ番組として平均視聴率32.39%、最高視聴率36.4%という驚異的数字を叩き出し、国内に怪獣ブームを巻き起こしました。
同作は、「地球と自然界のバランスが崩れたとき発生する現象や怪事件に、青年パイロット万城目淳とその助手・戸川一平、毎日新報の女性カメラマン・江戸川由利子が遭遇・解決していく」という、1話完結型のストーリーとなっています。渦を巻いて「ウルトラQ」のタイトルが現れるオープニングと石坂浩二氏による意味深なナレーションの効果も相まって、作品全体が現在の特撮作品とは異なる不気味な雰囲気に包まれています。
モノクロ作品特有の雰囲気や音質の粗さも不気味さを増幅し、もはやホラー作品ともいえるエピソードが満載。子供だけでなく大人も恐怖を楽しめる作品なのです。
例えば第1話「ゴメスを倒せ!」では、洞窟という閉鎖空間に突如現れる巨大なゴメス自体に恐怖する回です。薄暗い洞窟のなかで浮かび上がるゴメスの瞳は、モノクロ作品ならでは味わいでしょうか。また、ウルトラマンが登場しない同作において、怪獣に対処するのは人間しかいないと認識させられます。この回ではゴメスに対抗できる怪獣・リトラをなんとか孵化させて戦わせようとしますが、人間が自力では解決できないため、他の怪獣に頼る……という展開もリアルで切実です。
閉鎖空間といえば、第5話「ペギラが来た!」では南極を舞台に、人気怪獣のペギラが登場します。異常な寒波と4トンもある雪上車が空中へ舞い上がるという怪現象に加え、3年前に失踪した隊員の手帳に「ペギラ」という文字が残されていた……といったミステリー風の展開です。それに加えて、恋愛話やペギラを倒すドタバタ劇も盛り込まれ、2時間の怪獣映画を30分に凝縮したような見応えを感じさせる回です。
また、巨大怪獣ばかりではない点も『ウルトラQ』魅力です。第9話「クモ男爵」は、ホラー映画そのものと言っても過言ではない回です。登場するのは車ほどの大きさもある「大ぐもタランチュラ」という、怪獣というよりモンスター。灯台職員を襲うところから始まり、その後も洋館に迷い込んでしまった万城目一行を暗闇からつけ狙います。とにかく執念深く、水の上を走って追ってくる巨大クモの姿は一度見たら忘れられない光景でしょう。
『ウルトラQ』には、都市伝説的な回も多く含まれています。第15話「カネゴンの繭」は、お金を集めることが大好きな金男(かねお)少年が怪獣カネゴンに変身してしまうエピソード。金男少年が元の人間の姿に戻るために奮闘するという比較的平和な物語ですが、ラストに衝撃の展開が待っています。
巨大な造成地で子供が遊んだり、現在と違った物価を感じられたりと、60年代の雰囲気が詰まっているのも特徴です。
第17話「1/8計画」は、世にも奇妙な話の代表例です。怪獣が一切登場しない回で、人口問題解決のため人間や建物を1/8に縮小するという計画を描いています。この計画を“夢の国”として政府主導で推進しているというのが、恐怖を感じるポイントです。
そして第19話「2020年の挑戦」は、作中屈指の人気エピソード。不気味な液体に触れた人間が消えてしまう“人間消失事件”が多発します。黒幕はケムール人ですが、ただそこにいるだけでも怖いデザインや雰囲気に圧倒されます。終盤には大股で走り出すという、トラウマ級の描写もあります。
『ウルトラQ』は、ウルトラサブスク「TSUBURAYA IMAGINATION」で全話配信中。バンダイチャンネルなどで第1話が無料で視聴できます。夏休みにチェックしてみてはいかがでしょうか。
(椎名治仁)