本当は怖いウルトラマン…楳図かずお版は「バルタン星人」もトラウマものだった
なぜ自由な作風でウルトラマンを描けた?

オリジナルの『ウルトラマン』では、第2話「侵略者を撃て」で登場したバルタン星人。作風は楳図版と違ってコメディ色強めです。
それに対してコミカライズのバルタン星人登場エピソードは、シリーズの第1話にしてホラーテイスト。全10話構成という、やはりホラーテイストが色濃く反映された「ミイラ怪人ドドンゴの巻」と同じ最長エピソードでした。
それではなぜ、これほどまでに自由な作風で描けたのでしょうか?
楳図先生の連載がスタートしたのは、実は本家『ウルトラマン』が放送される前のこと。先行連載として、放送がスタートした時点では4話分が掲載済みでした。つまり番組制作と同時進行だったためオリジナル色が強くなったのです。
また「ウルトラマンを最初から登場させたい」という編集部の意向を受け、本家のシナリオに増築する形でエピソードを追加したのもその要因です。終盤は本家と同様の展開が繰り広げられるものの、大部分がオリジナル展開となりました。
なお楳図かずお版『ウルトラマン』は「バルタン星人の巻」が第1エピソードなので、ウルトラマンとハヤタ隊員の出逢いは描かれていません。バルタン星人と対峙する初登場の時点で、すでに人々に認知されていました。
本家特撮『ウルトラマン』と比較をすると、明らかに異色で作家性が強く出ている本作。しかしホラーテイスト効果でバルタン星人をはじめとする宇宙人や怪獣の存在感が増したり、メリハリのある整った作画も手伝ったりして、当時のファンの間では1、2を争うコミカライズ作品として人気を博したのでした。
(気賀沢昌志)