思わず「ヨシヨシ」したくなるウルトラ怪獣たち 実際は「切ないエピソード」が多い?
ウルトラシリーズを支える「ウルトラ怪獣」のなかには、恐さよりかわいさが勝るカワイイ系怪獣がいます。そのうえ地球で暴れる切ない理由がある「せつなカワイイ」怪獣たちは、愛さずにはいられません。
ヒーローより応援したくなる怪獣もいる?

円谷プロのウルトラシリーズに登場する「ウルトラ怪獣」たちは、造形も個性も豊かで、シリーズ人気を支える存在です。すぐに思い浮かぶのはバルタン星人、エレキング、ゼットン……といったスター格の怪獣かと思いますが、なかには怪獣とは名がつくものの、思わず「いい子いい子」してあげたくなるような、カワイイ怪獣たちもいます。
たとえばピグモン、カネゴン、快獣ブースカ(厳密にはウルトラ怪獣ではありませんが)……などなど。この記事では、そんなカワイイ系怪獣のなかでも、人間の住む世界で暴れざるをえない物語を背負った、ちょっと切ない「せつなカワイイ」怪獣を3体ご紹介します。
●カンガルー怪獣「パンドラとチンペ」
『ウルトラマンタロウ』第22話「子連れ怪獣の怒り!」回に登場したパンドラとチンペは、カンガルーに似た(顔はむしろコアラよりかも?)怪獣です。母親パンドラのお腹の袋から子どものチンペが顔をのぞかせている愛情あふれる姿は、カワイイのひと言。とくにチンペは、造形的にやや添え物感があり、まるで10年以上も子どもに抱っこされてきたぬいぐるみのようなボロボロ感で、胸が熱くなります。
親子は優しくおとなしい怪獣なのですが、心ならずも暴れ回り、ウルトラマンタロウと戦うことになってしまいました。それは……ちらりと見かけた怪獣の姿に驚いた女性が崖から落ちてしまい、夫が捜索しても見当たらないことから「あの怪獣に食われたんだ」と思い込み、猟銃で子どものチンペを撃ち殺してしまったからなのです。本当はパンドラとチンペは、怪我した女性に薬草を塗って介抱してくれていたというのに。勝手に驚いて勝手に落ちて、勝手に思い込んで殺してしまうなんて……。
子どもを殺された悲しみで、パンドラは凶暴化し暴れ回ります。宇宙警備隊ZATが総攻撃をしかけ、ウルトラマンタロウとの戦闘シーンに突入するのですが……ついつい思ってしまいます。「タロウ!そこは戦うんじゃなくて、パンドラをぎゅっと抱きしめてあげるところなんじゃないのかぁ!」と。
最後は、この出来事の元凶ともいえる女性に「いい怪獣だから殺さないで」と言われたタロウが、リライブ光線でチンペを生き返らせ、パンドラの傷も癒やして、ちゃんちゃん。複雑な気分ながら、パンドラとチンペの抱擁にはこみあげてくるものがあります。