ゲームの「隠しコマンド」最近見なくなった理由 「そもそも何のためにあった」?
「隠しコマンド」操作が複雑だった、納得の理由
デバッグでは、普通はやらないいろんな操作をしてミスを見つけます。ゲームオーバーの時にキーやボタンをメチャクチャに押しまくるとか、タイトル画面でAボタンを連打しまくりとか、そういうことをやるのです。ですから、簡単なコマンドだとそれで発動してしまうのです。これではデバッグ作業の邪魔になります。
「キャラが無敵になっちゃいました! ミス発見です!」「ごめん、それ今はいいんだ……」といったことが繰り返されると、人は本当のミスを発見しても「これもきっと仕込みだろう」と勝手に判断して報告しなくなってしまいます。デバッグ作業でもっともやってはいけないことのひとつです。
開発者がその手助けをしてしまったとなれば一大事ですね。そのため隠しコマンドを仕込む条件は、「普通の操作では発動しないこと」のほかに「メチャクチャに操作しても(簡単には)発動しないこと」が求められるのです。だから複雑なのです。
もちろん「隠しコマンド」が流行った後では、「プレイヤーに見つけてもらうために意図的に仕込む」ようになったので、「偶然の操作で発見できる」程度になっているケースもあります。なお、これはゲームの機能のひとつなのでデバッガーのチェック対象です。何だか本末転倒な話にも聞こえますが、こうして「隠しコマンド」文化は発展していき、現在も私たちの記憶に残っているのでしょう。
さて、では逆にどうしてファミコン時代以降「隠しコマンド」をあまり聞かなくなったのでしょう? 現在ではもうほとんどないのではないでしょうか。それはここまでの話を逆に考えてみると、答えのいくつかが見つかりそうです。
例えば、ゲームの規模が大きくなりセーブが当然になりました。するとキャラを無敵に改造したセーブデータを用意すれば、ゲーム側に何も仕込まなくても無敵キャラを出せますね。最初から存在しないので消し忘れる心配もありません。またゲーム機の性能も上がって、まるでパソコンの常駐プログラムのようにデバッグ用のツールを陰で動かすこともできるようになりました。
プレイヤーの視点で見ると、ゲームの規模が大きくなったので普通に遊ぶだけで十分、もしくは満腹すぎて手一杯になった……というのも大きいでしょう。「隠しコマンド」探しより遊び尽くすことに集中できるのは、ある意味本来の楽しみ方と言えます。こうして「隠しコマンド」はその役割を終えたということだろうと思うのです。
(タシロハヤト)