名作アニメの「リメイク」が多い理由 ファンに「嫌われない」作り方とは?【この業界の片隅で】
「実写化」の成功例を見ると…作品愛に欠けると嫌われる

アニメやマンガの実写化が発表された際、真っ先に語られるのは、「実在の俳優が架空のキャラクターにどれだけ似ているか?」です。これは、「リメイク物アニメが元の作品をどれだけ再現しているか?」と、似たようなことを言っています。
2024年にNetflixで配信される日本初の実写版『シティーハンター』では、主人公・冴羽リョウを鈴木亮平さんが演じるそうです。同じく主演作である2013年公開の『HK 変態仮面』も、「週刊少年ジャンプ」のマンガを実写化したものでした。
この作品で、彼は15kgにおよぶ体重調整を含めた徹底した肉体改造を行い、「いかにも変態っぽく見える」すり足での歩き方まで研究して開発したそうです。
元の作品を忠実に再現するためだけでなく、俳優として、面白さを最大限形にするためにそうしたのです。2019年に公開されて話題になったフランス映画『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』(フィリップ・ラショー監督)が、原作マンガやTV放送当時のアニメをそのまま再現していると言えるでしょうか? 冴羽リョウも槇村香も、そもそもフランス人ではありません。
それでも受け入れられたのは、再現度以上の「作品愛」があったからです。抽象的な言葉ですが、そうとしか表現のしようがありません。コアなファンだけでなく一般のお客さんにも、作品愛の有無は伝わります。どれだけ再現度が高くても、製作委員会の偉い人にありがちな「より売りたい」という下心が先立ってしまえば、作品愛に欠けているとみなされて、受け入れてもらえません。「ああ、そのために工夫しているのだな」と、お客さんがしらけてしまうからです。
リメイク物に対する否定的な反応を見て、「そこまで悪意にとらえなくても」と感じることは正直あります。ですがそれは、作品愛を表現するための製作側の工夫が、鈴木亮平さんやフィリップ・ラショー監督の領域に及んでいないということなのかもしれません。
「より売りたい」という下心は、アニメを産業として持続させるために必要不可欠なものではありますが、それでも、「好きだからやっている」という初心は忘れずにいたいものです。
(おふとん犬)