マグミクス | manga * anime * game

名作アニメの「リメイク」が多い理由 ファンに「嫌われない」作り方とは?【この業界の片隅で】

リメイク物の最大のリスク要因は「ファン」

2022年元日に発表され話題になった、『うる星やつら』リメイク (C)高橋留美子・小学館/アニメ「うる星やつら」製作委員会
2022年元日に発表され話題になった、『うる星やつら』リメイク (C)高橋留美子・小学館/アニメ「うる星やつら」製作委員会

 ただし、リメイク物には、それなりのリスクもあります。おかしなことを言うようですが、最大のリスク要因は、そのタイトルを当初から熱狂的に愛してくれているファンです。

 もちろん、彼らは真っ先に顧客になってくれます。ですが、リメイクされた作品の質や内容が意に沿わなかった場合、心からの失望と罵倒を拡散するインフルエンサーにもなり得ます。SNSの公式アカウントを炎上させたり、ほとんど脅迫まがいの苦情メールを、世界各国の言語でお問い合せフォームを通して送ってきたりすることさえあります。

 ひとつの作品を長年の間、心血を注ぐように応援してくれる理由は何か? 作品を見たことが、人生における感動の原体験になっているからです。その時の気持ちを何度でも味わいたくてリメイク物も真っ先に見るのが、ファン心理というものです。

 ですが、再体験が原体験を超えることはまずありません。客観的に見れば明らかにリメイク物のクオリティの方が高い場合でも、完全な満足とはいかず、どこか不満が残ってしまう結果になります。

 2022年10月からフジテレビ・ノイタミナ枠で放送されている『うる星やつら』の主題歌は、有名な「ラムのラブソング」ではありませんでした。音楽タイアップ出資を含め、さまざまな事情があってそうなったのでしょうが、熱狂的な作品ファンとっては、どうでも良いことです。なぜ「ラムのラブソング」ではないのかと、不満を表明するしかありません。

 映画『THE FIRST SLAM DUNK』の声優交代についても、情報解禁の方法には問題があるように思えるものの、スタッフや関係者が元の作品を軽く見ているから交代させたかというと、そんなことはあり得ません。監督も脚本も原作者である井上雄彦先生なのですから、軽く見ようがありません。にも関わらず、元の作品を熱狂的に愛する一部のファンには、「敬意を払っていない」ように見えてしまうのです。

 2019年に公開された『劇場版シティーハンター<新宿プライベート・アイズ>』などは、元の作品を再現するのに、ほぼ成功した事例と言えるかもしれません。ただし、その場合でも、別のリスクが生まれます。同じ主題歌や声優にこだわるのであれば、音楽タイアップによる出資金の獲得や、人気声優を通した新規顧客層へのアプローチは、当然ながら難しくなるからです。

【画像】賛否両論はやむなし? 超ビッグタイトルのリメイク作(6枚)

画像ギャラリー

1 2 3