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日本アニメ人気、理由は「普遍性」なのか?海外展開でぶつかる「政治的正しさ」の問題【この業界の片隅で】

「日本のアニメは、世界で人気がある」これには、正しい面とそうでない面があります。日本アニメの海外での売上は年々伸びているのは事実。しかし、作品の政治的な正しさ、いわゆるポリコレ問題に目を向けてみると……?

まっとうであればあるほど陥りやすい「ポリコレ」の問題

作品の政治的な「正しさ」は厄介で複雑(画像:イラストAC)
作品の政治的な「正しさ」は厄介で複雑(画像:イラストAC)

 アニメ業界の片隅で生きる著者・おふとん犬が、業界の片隅で拾ったさまざまな話題を取り上げて解説します。今回は、作品の政治的な正しさ、いわゆる「ポリティカル・コレクトネス(ポリコレ)」の問題について。その厄介さや複雑さを語りつつ、日本アニメの海外人気の要因を探ります。

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「日本のアニメは世界で人気!」というキャッチフレーズには、正しい面と、必ずしもそうとは言えない面があります。
 
 まずは正しい面として、日本アニメの海外売上が年々伸びているという事実があります。製作委員会を組むためにも、海外における自動公衆送信(動画配信)で、ある程度の数字が見込めないことには厳しいという見方が、今は普通でしょう。

 必ずしもそうとは言えないというのは、国境を越える普遍的な面白さがあるから世界で人気を得たわけではない、という意味です。そもそも、面白さに普遍性があるという考え方自体、作り手や売り手の希望的観測(?)をかなり含んだものです。

 芸術は国境を越えません。

 こんな意地の悪いことをわざわざ言うのは、「はじめから世界で勝負できる作品をつくれば、もっと世界中でヒットするはずだ」という、よくある主張に反論したいからです。

 この主張、冷静に考えてみれば、「世界でうける作品なら世界でうけるはずだ」という、もっともらしいだけの同語反復にすぎません。ディズニーアニメのように、世界中の誰からも受け入れられる作品というのは事実あるじゃないかと、おっしゃる方がいるかもしれません。そういう方は、ディズニーが作品内容を検討するより先に、大規模な市場の調査や開発、最先端の心理学を踏まえた分析などを、莫大なコストをかけて行っているという事実を無視しています。
 
 ディズニーアニメは面白さどうこうの前に、あらゆる意味で圧倒的な資本力がなければ生み出せないものですし、資本に従う内容にもなっているのです。もちろん、結果として、相対的に多くの人々にうけやすい面を持っていることは事実でしょう。作品を批判したり、作品を見て心動かされる人を冷笑したりしているわけでも、決してありません。『ベイマックス』など、個人的に好きなタイトルはいくつもあります。

 私が言いたいのは、残念ながら「国境を越えるのは芸術ではなくお金」だということです。ますますげんなりしてしまった? まっとうな感性です。けれど、まっとうであればあるほど、政治的正しさ、いわゆるポリコレにからめ取られて抜け出せなくなる危険性もあります。私など及びもつかないほど頭が良く、能力も高くて経験豊かな方が、普遍的な面白さの背景となる普遍的な正しさを真面目に追求するあまりバランスを失って、極端かつ攻撃的な考えにとらわれていくのを見たのは、一度だけではありません。

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