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新元号になる前にーー”平成アニメ”とは何?『平成最後のアニメ論』著者に聞く

いよいよ2019年4月で、平成が終わり新しい元号になります。平成という時代の歩みとともにさまざまな作品を世にもたらした「平成アニメ」とは、私たちにとってどのような存在だったのでしょうか。

アニメの人気の裏に「萌え」という燃料

 平成の大きなコンテンツのひとつである「アニメ」。このほど刊行された『平成最後のアニメ論』(町口哲生/ポプラ社)では、大ヒットを記録した『君の名は。』や『けものフレンズ』といった話題作を学術的に解説し、考察しています。

 著者の町口哲生さんは、近畿大学で講義を担当しており、自身の受け持つ講義の宿題として「週に20本以上のアニメを視聴」を設定したことでも話題になりました。「平成アニメとは何だったのか」について、町口さんにお話を聞きました。

『平成最後のアニメ論』(ポプラ社)
『平成最後のアニメ論』(ポプラ社)

ーー平成アニメをひとことで表すと、何だったのでしょうか?

町口哲生さん(以下敬称略)いろいろな答え方は出来ますが、やはり「萌え」ですかね(笑)。「萌え」という燃料があったから、今日のアニメの人気があると思います。

「萌え」とは、「キャラクターやその属性に対する擬似恋愛」を指します。それが社会学や心理学用語でいう「エンパワメント」。つまり私たちに夢や希望を与え、勇気づけ、もともと有しているはずの生きる力を引き出すものとして、「萌え」、そして平成アニメは機能した気がします。私はとても励まされ、生きる力をもらいました。

ーーどのような作品がありますか?

 有名な作品なら、1995(平成7)年にテレビ放映が始まった『新世紀エヴァンゲリオン』、ゼロ年代の『涼宮ハルヒの憂鬱』(2006)や『けいおん!』(2009)、10年代に入って、『魔法少女まどか☆マギカ』(2011)から『君の名は。』(2016)。各々の作品の作風はまったく異なるし、なかには「エヴァ」や「まどマギ」のような、エンパワーメントとは逆、つまりディスエンパワーメントされるような作品もあります。

 しかし、共通点は作中のキャラクターが魅力的であること。それによって私たちの「萌え」回路が発動するんです。

 私のお気に入りキャラクター、惣流アスカ・ラングレー(『新世紀エヴァンゲリオン』)、涼宮ハルヒ(『涼宮ハルヒの憂鬱』)、秋山澪(『けいおん!』)、鹿目まどか(『魔法少女まどか☆マギカ』)、宮水三葉(『君の名は。』)を例にあげると、見てもらったらわかるように、「顔の大きさに対して、目が大きく、鼻と口が小さい」。いわゆる「萌え絵」の系譜ですね。もっとも三葉はこの系譜であるかは、議論の分かれるところですが……。

「萌え絵」は、時期によってあるいは制作者によって、顔のパーツの大きさやバランス、造形の好みの変遷があります。ごく大ざっぱに比較すると、平成も時代が経過するとともに、次第に落ち着いた造形になっています。作品に対して感情移入するためには、魅力的なキャラクターの造形は不可欠です。これが「平成アニメ」の原動力の1つだと思います。

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