令和の新作放つ『あさりちゃん』 作者も含め「まるごと愛される」ワケ
ふたりの女性作者よって100冊の単行本を世に出したマンガ『あさりちゃん』は、連載終了後もさまざまな活動で話題になっています。『あさりちゃん』が多くの読者に愛される理由のひとつは、作者自身に親しみを感じさせるキャラクターにありました。
タタミとあさりは、「姉妹の言い分」の代弁者

小学生の女の子を主人公としたギャグマンガの名作『あさりちゃん』の新たな描き下ろし作品『これが令和のあさりちゃん』が2019年9月27日(金)に公開され、再び話題を呼びました。
ふたりの女性作者による『あさりちゃん』が、作者も含めて多くの読者に愛されるのはなぜでしょうか。少女マンガに詳しい、別冊なかむらりょうこさん(ワタナベエンターテインメント所属)が解説します。
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『あさりちゃん』は、1978年に連載が開始し、2014年に第100巻の発売をもって惜しまれつつも完結した大人気作品です。36年にわたる連載から生み出された100巻の偉業により、作者のおふたりは「女性2人組による1コミックシリーズ最多発行巻数」として2014年にギネス世界記録に認定されました。
また、1話完結でどこからでも読める『あさりちゃん』は、読者層を問わず、幅広い年代に親しまれ、単行本の累計発行部数は連載終了時点で約2800万部を超えています。
そんな昭和生まれで平成を生きた『あさりちゃん』が、令和の時代になって再登場。今までの『あさりちゃん』の面影が一切なく、戦うヒロイン「ラブリティあさりん」が登場する、衝撃のオープニングです。
100巻も続いた『あさりちゃん』には、姉妹の普遍的な姿が描かれてきました。通っている小学校にちなみ「桜貝小の野獣」の異名を持つ、スポーツ万能で大食いで絵が上手くて一切勉強ができない小学4年生の「浜野あさり」と、「桜貝小一の秀才」と称される、勉強家で高飛車でお金に目がなく人のあら探しが得意な小学6年生の「浜野タタミ」。
姉のタタミが妹のあさりを調子に乗らせて、結果あさりは大暴れ。そしてお母さんの「さんごママ」の大激怒。
『あさりちゃん』の初期作品は、家のなかで巻き起こる家族の話が中心でしたが、次第にあさりとタタミが通う桜貝小学校のキャラクターたちも増え、話の内容は友情や淡い恋、心霊や雑学など、多岐にわたるようになりました。
筆者にも2歳年上の姉がいまして、とても頭が良く勉強ができるんです。
当然のように、私はあさりに肩入れし、姉のイジワルな部分をタタミと重ねていました。隣の机で『あさりちゃん』の別の巻を読んでいた姉は、がさつでお調子者の私をあさりと重ね、ため息をついてくれていたことでしょうが……。
ところ構わず勃発する姉妹げんか。なのに時として合致する思惑、からの壮大な悪巧み……。時代は変われど変わらぬ姉妹の形。姉はクールで妹は大ざっぱ。その最強がタタミとあさりの浜野姉妹なのです。