『ドラクエ4コマ』『天空物語』幸宮チノ先生インタビュー「徹夜で仕上げて投稿した」
『ドラゴンクエスト4コママンガ劇場』でデビューし、『ドラゴンクエストV』のスピンオフ作品『天空物語』を手掛けた、漫画家の幸宮チノ先生にインタビュー。初めて『ドラクエ4コマ』を投稿した時の思い出などを語ってもらいました。
マンガの描き方が分からず…知ったその日に投稿原稿を仕上げた!
1990年に第1巻が発行された『ドラゴンクエスト4コママンガ劇場(以下、ドラクエ4コマ)』は、約30年が経った現在でも復刊を望む声が絶えないほどの人気作品であり、読者投稿の企画から、多数のプロ作家も輩出しています。
『ドラクエ4コマ』の投稿をきっかけにプロデビューし、『ドラクエV』のスピンオフ作品であるマンガ『ドラゴンクエスト 天空物語』も手がけた幸宮チノ(ゆきみや・ちの)先生に、当時の思い出を語ってもらいました。
ーー初めて読んだ『ドラクエ4コマ』の思い出を教えて下さい。
『ドラゴンクエストIII知られざる伝説』だったでしょうか? 外伝的な本の巻末に栗本和博先生が執筆なさっていたのを、夢中になって読んだことが始まりでした。
その後『4コママンガ劇場』が刊行されることを知り、発売日には学校の授業が終わるのも待ちきれない気持ちで書店に駆け込みましたね! もう高校生くらいでしたが、まるで幼い頃に戻ったかのようにマンガにかじりつきました。
ーー「月刊少年ガンガン」の読者投稿企画『4コマクラブ』に応募したきっかけは?
はじめのうちは読者さんの投稿作品を楽しく読んでいたのですが、次第に「同じ『素人』なのに、どうして自分はここに飛び込めないんだろう」と考えるようになりました。
とはいえ、マンガを描くノウハウが全くなくて……。そんな時、石田和明先生の「4コママンガを投稿する手引き」のようなマンガが掲載され、紙のサイズなどを知りました。「これで『ドラクエ4コマ』を描ける!」と浮き足立って、その日のうちに徹夜で描き上げ、初めての投稿をしました。
ーープロデビューのきっかけは?
マンガを描くことに対して母親がいい顔をしなかったので、深夜にこっそり描いていたのですが、賞金の現金書留が家に届いた時に見つかってしまいました。怒られると思ったのですが、さすが大阪で生まれた女。「マンガでお金もらえんの!?」とめちゃくちゃ応援してくれるようになりました。
母親にプッシュされ、手元にあったストックを多めに投稿するとすぐに編集部から電話があり、デビューが決まりました。デビューのきっかけになったのは、母の応援ということになりますかね……。
ーーネタで読者の反響が大きかったものは?
プロデビュー後で反響が多かったものは、4コマではないのですが、1ページでひとつのネタが完結する『1Pコミック劇場』に描いた、「ドラクエIIIのランシールの洞窟で『引き返せ』と連呼する壁の顔と僧侶が対話をする」というネタと、「ドラクエVで、『子供の頃の主人公との思い出がない』とつぶやいたフローラを、主人公が夜中に起こしてお化け退治に誘う」という、ほんわかしたネタです。
自分のネタで気に入っているのは、投稿時代に描いた「はぐれメタルが4コマの枠の外まで逃げていく」や「パルプンテを唱えたら4コマ目のオチを失った」という内容です。