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仮面ライダーのボツ企画、TV局の騒動 『ゴレンジャー』が誕生した意外な理由

1975年4月から放送された『秘密戦隊ゴレンジャー』『仮面ライダーストロンガー』は、同じ東映と石ノ森章太郎さんが生み出した変身特撮番組です。実は、『ゴレンジャー』は『ストロンガー』のボツ企画から生まれた作品でした。2作は特撮ブームの分岐点に生まれたのです。今回は、「ゴレンジャー誕生」のきっかけに注目します。

生身の人間という設定で今までにないヒーロー像が確立

「スーパー戦隊 Official Mook 20世紀 1975 秘密戦隊ゴレンジャー (講談社シリーズMOOK)」(講談社)
「スーパー戦隊 Official Mook 20世紀 1975 秘密戦隊ゴレンジャー (講談社シリーズMOOK)」(講談社)

 1975年の4月から放送された『仮面ライダーストロンガー』と『秘密戦隊ゴレンジャー』は、同じ「東映×石ノ森章太郎(当時石森章太郎)さん」のコラボで生み出された特撮番組でした。実は『ゴレンジャー』は『仮面ライダー』がチームで戦うという、『ストロンガー』の当初の企画をアレンジしたものだったのです。この記事ではスーパー戦隊の礎になった『ゴレンジャー』誕生のきっかけを紹介します。

『ストロンガー』の前作1974年『仮面ライダーアマゾン』は高視聴率だったにもかかわらず、半年で放送の終了が決定します。当時、毎日新聞資本である大阪の毎日放送制作の番組がNET(のちのテレビ朝日)で放送され、逆に朝日新聞資本の大阪の朝日放送制作の番組がTBSで放送されるという「腸捻転」と呼ばれる状態でした。

 そして、1975年4月から毎日放送制作の番組は本来のキー局であるTBS系列で放送されると決定します。それにともない人気番組『仮面ライダー』はTBSに引っ越しすることになり、『アマゾン』に替わる新番組が求められました。

『秘密戦隊ゴレンジャー大全―仮面怪人大百科』(双葉社)の東映の平山亨プロデューサーのインタビューによると、企画段階では「ライダーも5作目になるので大きな変化をつけよう」と、石森さんと話し合ううちに、最初からライダーが5人いて5色に色分けして個性を出す、というアイデアが生まれました。ところが、毎日放送側から「ヒーローはひとりでなければならない」と言われて断念します。

 結局『仮面ライダーストロンガー』は、ひとりのヒーローのままスタートします。一方で仮面ライダーの放送枠がなくなってしまったNETは、新たな特撮番組の製作を持ちかけました。そこで、平山さんは『仮面ライダー』で実現できなかった集団ヒーロー番組を、練り直しました。それが『秘密戦隊ゴレンジャー』だったのです。

 さらに特撮ばかりに頼らず、スパイアクションやミステリー的な展開を加えるために、変身するのは「等身大の生身の人間」の設定になります。その影響で『仮面ライダー』や『キカイダー』にある、普通の人間ではない宿命に生きる悲壮感がなくなり、番組の雰囲気がより明るく楽しいものになりました。

『スーパー戦隊 Official Mook 20世紀 1975 秘密戦隊ゴレンジャー』(講談社)によれば、平山さんと同じ東映のプロデューサー・吉川進さんは『仮面ライダー』と差別化するため、5人揃って初めて相手を倒せるところをポイントにしたそうです。

 そこで5人それぞれの個性があり、特徴に合わせた武器や役割を持たせることになりました。ひとりひとりの力は怪人よりも弱い設定のおかげで、『仮面ライダー』ではタブーだった武器の使用や、「バリブルーン」や「バリタンク」などの巨大戦闘メカを持っても違和感がなくなりました。また怪人も親しみのある「仮面怪人」となり、本来特撮を見なかった視聴者も獲得することに成功します。

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