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アニメ『放課後さいころ倶楽部』ボードゲームと少女たちが教えてくれる「大切なこと」

2019年10月2日から放送されているTVアニメ『放課後さいころ倶楽部』は、少女たちがボードゲームを通じて心を通わせ、成長していく物語です。劇中に毎回登場するさまざまなボードゲームは、実際に世界中で遊ばれているものばかり。それらの面白さと作中における役割は見事にリンクし、観る者の心を動かします。

ボードゲームの本場・ドイツからの転校生が物語を動かす

ドイツからの転校生・エミーリア(エミー)。『放課後さいころ倶楽部』第10話より
ドイツからの転校生・エミーリア(エミー)。『放課後さいころ倶楽部』第10話より

 2019年10月2日から放送中のTVアニメ『放課後さいころ倶楽部』には、世界に実在するさまざまなボードゲームが登場。そのルールや面白さは物語と見事にリンクし、観る者を惹きつけています。同作に登場するボードゲームの魅力とストーリーにおける役割について、ボードゲームジャーナリストの小野卓也さんが解説します。

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 アニメ『放課後さいころ倶楽部』は第11話のTV放送にさしかかり、ストーリーも佳境に。初めての学園祭での試練から、ドイツからの転校生・エミーリア(エミー)の登場、ミドリの創作ゲームへと広がり、エミーを軸として物語が展開していきます。エミーが「だるまさんがころんだ」をアレンジする話(第9話)、ミドリが仲間の力で創作ゲームを改良していく話(第11話)など、既成のボードゲームによらない要素もあり、飽きることがありません。

 第8話では、ミドリら3人が通う高校の近くにボードゲームカフェがオープン。そこで3人は初めてエミーと出会います。実はエミーは、街で3人を見かけていたので「二度目まして」でした。

ミドリ「エミー、ご出身はどちらなの?」
エミー「ドイツ・ハンブルクでース」
ミドリ「まぁ、本場ですね! うらやましいわ!」
エミー「ハーイ、ドイツでは子供も大人もみんなゲームしまース。でも日本、ゲームできる場所少ないです。だからお店つくりましたネ」

 ミドリがすでに知っていたように、ドイツはボードゲームの本場で、日本がファミコンブームに沸き立っていた1980年代頃から、ファミリー向けと言いつつハイターゲットのボードゲーム製作が盛んになりました。その牽引役となったのが、「ドイツ年間ゲーム大賞(Spiel des Jahres)」です。

 ドイツ年間ゲーム大賞は、新聞や雑誌でボードゲームの記事を書いているジャーナリストたちが「今年一番のボードゲーム」を選ぶもので、1979年に始まりました。その影響力は大きく、大賞を受賞するとドイツ国内の玩具店だけでなく書店やデパートにも平積みで販売され、30万セットの売上は堅いといわれています。

 アヤから一緒に遊ぼうと言われ、感激したエミーが持ってきた「エミーの一番のお気に入り」が『ケルト(Keltis)』でした。このボードゲームは、2008年にドイツ年間ゲーム大賞を受賞しています。作者はライナー・クニツィア(ドイツ)で、作品数、人気ともに他の追随を許さないナンバー1デザイナーです。

 彼は1990年代より『モダンアート』『ラー』『バトルライン』などの傑作を発表し続けてきましたが、ドイツ年間ゲーム大賞を受賞したことはなく、「無冠の帝王」と呼ばれていました。そのクニツィアが初めて大賞を受賞したのが、『ケルト』なのです(その後は1回も大賞を受賞しておらず、『ケルト』がクニツィア唯一の大賞受賞作となっています)。

【画像】『放課後さいころ倶楽部』心と心が触れ合う、ボードゲームのシーン(11枚)

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