アカレンジャー・誠直也さんの前作『ファイヤーマン』は儚い幕切れながら重要作?
スーパー戦隊第1作『秘密戦隊ゴレンジャー』のリーダーであるアカレンジャーの海城剛を演じた誠直也さんは、それ以前に円谷プロのヒーロー特撮番組『ファイヤーマン』にも主演していました。円谷プロ10周年の記念作品『ファイヤーマン』は、視聴率で苦戦し、「幻の特撮番組」として今も語り継がれています。
アカレンジャー誠直也さんは真っ赤な炎がピッタリの熱血俳優
1975年放送の『秘密戦隊ゴレンジャー』の主演は、アカレンジャー海城剛役の誠直也さんです。当時アオレンジャー役の宮内洋さんが1973年『仮面ライダーV3』の主演などですでに茶の間にお馴染みでしたが、実は誠さんもすでに特撮番組の主演を担当していました。それが1973年の円谷プロ製作『ファイヤーマン』です。しかし、知名度が上がらないまま打ち切りとなり、幻の特撮番組になってしまいました。
『ファイヤーマン』は、円谷プロの10周年記念作品として制作された作品です。ウルトラシリーズは地球や宇宙空間、1971年から放送された『ミラーマン』は異次元世界が描かれていたのに対し、『ファイヤーマン』は海洋や地底が舞台です。「円谷特撮の原点回帰」を狙ったために、当初はハードな展開が続きました。
誠さんが演じた岬大助は、1万1500年前に海底に滅んだアバン大陸の末裔である地底人ミサキーです。岬は太古の眠りから覚めた地底怪獣や侵略宇宙人から地球と人類を守るため、「ファイヤースティック」で変身して、マグマの力を持つファイヤーマンとなって戦います。マグマがモチーフだけに、炎を使った合成がこれでもかというほど使用されました。
ファイヤーマンは、全身真っ赤のスーツに銀色のマスク、大きな赤い目が特徴です。マグマをエネルギー源にしており、「ファイヤーフラッシュ」や「ファイヤースパーク」など炎を使った技を繰り出します。
子供に喜ばれるように、「活動時間は3分で時間が迫ると額のランプが点滅する」「主人公の岬が人間体であるときは地球科学特捜隊SAFの隊員である」など、何からなにまで『ウルトラマン』のフォーマットを踏襲していました。番組途中でパワーアップしたアイテムも、1971年『帰ってきたウルトラマン』同様にブレスレットです。
どこまでもウルトラマンの真似で、さらに劣化版のようになったのは、放送開始が前倒しになってしまったからのようです。10年以上も日曜6時半の人気を独占していた『シャボン玉ホリデー』の後番組がわずか数か月で打ち切りになり、急遽『ファイヤーマン』がその枠に入れられました。急ピッチで作品を作らなければならなくなり、作品独自の要素を盛り込む時間がなかったと考えられます。
そして、『シャボン玉ホリデー』を終了させ、その後の番組も打ち切りに追い込んだのが、1969年から放送され現在でも不動の人気を誇るアニメ『サザエさん』でした。やはり『ファイヤーマン』も『サザエさん』には太刀打ちできず、第13話で火曜19時に放送時間が移動します。そして視聴率回復を目指し、同時期に制作していた『ウルトラマンタロウ』のように子供を絡めた親しみやすい怪獣を登場させますが、視聴率が伸びることはなく全30話で終了しました。
最終回、戦いに力尽きたファイヤーマンは、防衛チーム地球科学特捜隊SAFの基地を襲撃した物体Xとともに宇宙の彼方へ消えていきます。円谷特撮史上、最も儚い幕切れでした。