「怪獣使いと少年」には救いがあった!『帰ってきたウルトラマン』がたどり着いた境地
人の暗部を覗き見た先輩として…『ウルトラマンメビウス』に登場

アニメや特撮、ゲームを追いかける人生を過ごしていれば、たびたび「怪獣使いと少年」の話は耳に入ります。筆者もその後、このエピソードをたびたび見返す機会がありましたが、そのたびに子供の頃に感じた恐怖を思い出していました。
そんな状況が変化したのは、2006年です。この年に放送された『ウルトラマンメビウス』は、昭和に放送されたウルトラマンシリーズの集大成とも言える作品で、多くのウルトラ兄弟が客演するのみならず、過去の作品でくすぶっていたストーリーに決着をつける展開も見られました。
「怪獣使いと少年」も、32話「怪獣使いの遺産」で、ムルチを倒したその後が語られています。この話では、地球人に殺害されたメイツ星人の息子であるビオが地球を訪れ、父を殺した地球人への憎しみをたぎらせますが、最終的には和解します。良少年は残念ながら行方知れずですが、小説版「ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント」では彼がメイツ星人の死後何をしていたのか、わずかですが描写されています。
しかしそれ以上に筆者にとって大きかったのが、45話「デスレムのたくらみ」への新マンの客演です。この話で、ウルトラマンメビウスこと主人公のヒビノ・ミライは人間から手ひどい扱いを受け、大きな精神的ショックを受けてしまいます。
仲間たちのもとを離れ、呆然とした様子で座り込むミライの前に現れた郷秀樹は、「人間の強さも、弱さも、美しさも、醜さもその両方を知らなければ、お前はこの星を愛することはできない」と諭します。
さらに郷秀樹は、「俺たち兄弟は戦い続けてきた。この星は守るに値する星だと信じて」と続けます。この言葉を聞き、新マンはかつて見せつけられた人間の醜ささえも受け入れて、この星、地球を愛してくれているのだと、筆者はようやく知ることができたのです。
そして、メビウスとともに戦い、再び地球を守り抜いた新マンの姿に、筆者はただ感動する他ありませんでした。こうして20数年にわたり心のなかにこびりついていた、ウルトラマンに見捨てられる恐怖心は、ようやく拭い去られたのです。
(早川清一朗)
※編集部注:「帰ってきたウルトラマン」の正式名称は「ウルトラマンジャック」ですが、本記事では執筆者の意向を尊重し、「新マン」および「ウルトラマン」と表記しました。