マニア向け『ケロロ軍曹』がファミリー層に浸透したワケ 20周年に新アニメであります
ファミリー向けとして更なる飛躍を遂げた『ケロロ軍曹』

TVアニメ化によって開拓できた層、それは低年齢層でした。もともと連載していた「少年エース」を読むことがほとんどなかったこの層が、TVアニメとなった『ケロロ軍曹』にハマってさらなる人気の後支えになったというわけです。
これに関して佐藤順一総監督は「このアニメは小さな子供にも観てもらいたい」と述べています。そのため、アニメ化する際には低年齢層への配慮として過剰な暴力シーンを減らし、原作に沿った話でもアニメ独自の設定でソフトにしていることもありました。
こういったアニメでの改変が、原作マンガの良い部分を抽出したといえるのかもしれません。その結果、多少のマニアックなネタでも、理解できなくても面白いと思わせることに成功したのでしょう。
TVアニメの人気は早い段階から高まり、「東京国際アニメフェア2005」においてテレビ部門優秀作品賞を受賞したほか、「第50回(2004年度)小学館漫画賞」の児童向け部門にて、角川書店の作品としては初めて受賞しました。
その勢いはとどまることなく、1年の放送予定だったTVアニメは2年目へと延長されることとなります。さらに「少年エース」の増刊として、季刊で本作を中心とした「ケロロランド」が2004年から創刊しました。2007年には、同じく低年齢層向け雑誌で「ケロケロエース」が創刊されます。
2年目以降は放送局からの期待もより大きくなり、土曜朝から金曜夕方へと放送時間が変更されました。この頃からテレビ東京の看板番組であるアニメ『ポケットモンスター』と肩を並べるほどの勢いを見せています。さらに劇場版長編アニメも2006年から制作されるようになり、2010年まで5本が春映画として公開されていました。
何度か時間枠が変更されるものの、TVアニメの放送も長期に渡って安定していましたが、2011年3月27日放送の第357話で放送終了となります。この放送話数は、後に『銀魂』に抜かれるまでは、サンライズ作品最長の記録となりました。
しかし、ここで完全に終わったわけでないのが『ケロロ軍曹』のスゴいところです。2014年3月22日より『ケロロ ~keroro~』というタイトルで、フラッシュアニメとなった本作がアニマックスで放送開始されました。
また2021年には、映画館の本編開始前に流れるおなじみ「NO MORE 映画泥棒」とコラボするなど、近年においてもその知名度と人気は衰えていません。もともとこういったコラボが多いのも、『ケロロ軍曹』の魅力のひとつだったといえるでしょう。
今年(2024年)になってからもX(旧Twitter)でアニメ公式アカウントができるなど、アニメ化から20年を迎えるにあたり動きが見られるようになりました。3月26日からはツイキャスにてアニメ全358話が6日間にわたりノンストップ放映され、そしてYouTube「【公式】ケロロチャンネル」では、4月1日午前0時に公開した動画にて、新規アニメプロジェクトの始動が発表されています。
かつてTVアニメが終了する際に、放送局であるテレビ東京は「充電のための休止」「再開は現在のところ未定」と述べており、原作も、不定期ながら連載が続いていました。満を持しての新規アニメ化といえるのではないでしょうか、期待しましょう。
(加々美利治)