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『ガンダム』ニュータイプ「シャリア・ブル」の憂鬱 歯車が違えばシャアの副官に?

『機動戦士ガンダム』では、登場が1話限りながら印象的なキャラクターが多くいます。そのなかでも「シャリア・ブル」は評価が分かれるキャラクターかもしれません。その理由とは何でしょうか。

なぜシャリア・ブルは初陣で敗北を喫したのか。

おなじみシャリア・ブルの乗機。「1/550 ブラウ・ブロ」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ
おなじみシャリア・ブルの乗機。「1/550 ブラウ・ブロ」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

『機動戦士ガンダム』の登場人物のひとり「シャリア・ブル」は、1話しか登場していないゲストキャラクターですが、人によって印象が変わることがあります。それはなぜでしょうか。

 シャリア・ブルは、第39話「ニュータイプ、シャリア・ブル」の1話だけに登場したキャラクターです。木星エネルギー船団の隊長を務めており、危険な任務にもかかわらず何度も無事に帰還したことから「ニュータイプ」の素養を認められました。

 そのため「ギレン・ザビ」のもとから、「キシリア・ザビ」配下のニュータイプ部隊へと送り込まれます。この際にギレンがキリシアのもとへ送る意図を察し、あえてはぐらかすような言い回しで答えました。

 その洞察力はまさにニュータイプのそれで、その後に「シャア・アズナブル」と出会ったときにも発揮されます。シャアの心の奥底を見透かし、あえてそれを口にせず、諭すような言い回しで気持ちを伝えました。

 そのように、ニュータイプとして高いコミュニケーション能力を持ったシャリア・ブルでしたが、戦闘的な能力にはそれほど長けておらず、愛機となったMA(モビルアーマー)「MAN-03 ブラウ・ブロ」の初戦で、地球連邦軍のニュータイプ「アムロ・レイ」の「RX-78 ガンダム」に敗れています。

 このように1話しか出演機会がなく、それほどの活躍のないまま退場したシャリア・ブルながら、ファンから語られることの少なくないキャラクターです。その最大の理由は、ガンダムシリーズ初の「木星帰り」という設定にあるかもしれません。

 後年のガンダムシリーズでは、この木星帰りという言葉は重要な意味を持つことがありました。「パプテマス・シロッコ」といったラスボス級のキャラクターも同じく木星帰りだからです。

 その点から考えると、シャリア・ブルも同じくらいの実力を持ったキャラクターだといえるかもしれません。しかし、そうならなかったのは実直すぎる性格が原因なのでしょう。もしも、相手との交渉術に長けていたならば、対人関係での危険回避も容易かったかもしれません。木星という危険な場所での危機回避には定評があっても、対人関係でそれを生かせなかったことが敗因に直結したのです。

 このことをいみじくも的確に分かっていたのがシャアでした。シャアはシャリア・ブルのことを「彼はギレン様とキシリア様の間で器用に立ち回れぬ自分を知っていた不幸な男だ」と評しています。もっとも、これをシャアが利用していた節もありました。それは初陣の際、ブラウ・ブロ1機で護衛機もつけずに戦場へ出したからです。

 このシャアらしからぬ浅はかな采配で、シャリア・ブルは初戦で帰らぬ人になったともいえるでしょう。つまりシャアはあえてシャリア・ブルを殺したと考えられます。シャアがシャリア・ブルに対して「私はまた友人が増えたようだ」といっていますが、これは「ガルマ・ザビ」と同じ意味だと考えられるのではないでしょうか。

 どうしてシャアがシャリア・ブルを殺さなければならなかったのか。いくつもの考察がファンのあいだでもあります。筆者が考えたのは、シャリア・ブルが実直な性格ゆえにシャアの野心に理がないと思えば、敵となる可能性があるから、というものです。それをシャアは恐れたのではないでしょうか。これはあくまでも筆者の推測です。

 しかし、TVアニメではこうなってしまったシャアとシャリア・ブルが、別の道を歩んだ世界線もありました。

【画像】えっ、ビグ・ザムよりデカかったっけ? こちら「ガンダム」と「ブラウ・ブロ」「ビグ・ザム」を並べた様子です

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