1980年代の「アニメ誌」を今読んだら衝撃の連続! 『ガンダム』ヒロインの裸体、セル画盗難事件も
声優と一緒に豪華サイパンツアー!?

この号では『サイボーグ009 超銀河伝説』(1980年12月10日公開)の特集も組まれていました。なかでも驚いたのが「サイボーグツアー参加者募集!!」という記事です。なんとアニメ公式とファンによる、4日間のサイパン旅行ツアーが企画されていたのです。
ゲストには原作者の石森章太郎さん、飯島敬プロデューサー、さらには主要声優陣として井上和彦さん(009/島村ジョー役)、杉山佳寿子さん(003/フランソワーズ・アルヌール役)、アニメソングを歌う町田義人さん、山本百合子さんなど錚々たるメンバーが参加予定とのこと。「X島でのサバイバルライフ」「マリンスポーツチャレンジ」「ゴージャスな歌と踊りのステージ」に加え、声優やスタッフによる楽しいショー、さらにはサイン色紙や映画原画セル、記念写真などの特典付き。
募集人数100人限定で費用は13万5000円。当時の物価から考えると相当な高額ですが、この内容なら安いとさえ思うファンもいそうです。
●声優特集の衝撃的な親密さ
折り込みページには、『機動戦士ガンダム』のマチルダ・アジャン役で人気を博した戸田恵子さんのグラビアが掲載されていました。笑顔ではなくアンニュイな表情に徹しており、黒のレザージャケット姿でクールな印象です。タバコをくゆらせる場面もあり、「大人の女性」として演出されていたのも印象的でした。
さらに衝撃だったのは、人気声優インタビュー「声優24時」のコーナー。『戦国魔神ゴーショーグン』のレオナルド・メディチ・ブンドル役や『宇宙戦士バルディオス』のマリン・レイガン役などで知られる、故・塩沢兼人さんが特集されており、いまでは考えられない取材スタイルに驚きました。取材場所はなんと塩沢さんの自宅で、「適当な喫茶店もないから、いっそ僕んちきます?」というフランクさで記者を迎え入れたそうです。
記事では両親はおらずおばあちゃんとふたり暮らしであることや、「お酒を飲んでジャズを聴いているときが最高」といった私生活まで赤裸々に語られています。現代の声優インタビューではなかなか見られない親密さです。
●セル画盗難事件の公開捜査
雑誌末尾で最も驚いたのは、『ルパン三世』の銭形警部のイラストとともに「WANTED!! 『あしたのジョー・2』セル画盗難!!」と題された記事です。銭形警部の口調で記された文章によれば、1980年10月13日の深夜、東京ムービーに「怪盗」が忍び入り、セル原画12000枚(!)を盗んだとのこと。
うち850カットは過去の話数のものでしたが、新エピソードでは20カットが紛失。撮影前だったため、描き直しを余儀なくされたそうです。記事末尾には「10月20日現在、事件は未解決です。何かお心あたりのある人はご連絡ください」と、まるで公開捜査のような呼びかけまで。
昔は、いまよりも気軽にアニメ制作現場に訪れることができ、それゆえこうした窃盗事件もしばしば起きたとされます。「おおらかな時代」ゆえの弊害だといえるかもしれません。
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今回手に取った一冊の古いアニメ誌は、当時のファンが必死に求めた、アニメの数少ない情報源のひとつでした。月に一度の発売日を心待ちにし、雑誌の隅々まで読み込み、記事を切り抜いてスクラップブックに貼り付けるーーそんな文化がいまや懐かしく感じられる一方、当時の雑誌とファンが育てたアニメへの情熱が、途切れることなく現代へと続いてることを思えば、とても感慨深いものがあります。
(マグミクス編集部)