『Zガンダム』悲劇の主人公、カミーユの運命は「時代」が変えた。「今の子供たちは…」
TVアニメ版では「精神崩壊」という前代未聞の退場劇を迎えた、『Zガンダム』主人公のカミーユ・ビダンですが、後に製作された劇場版では違う運命が待ち受けていました。それは、時代の流れが変えた異例の出来事だったのです。
悲劇のきっかけとなった、さまざまなストレスの蓄積

本日11月11日は、『機動戦士Zガンダム』の主人公、カミーユ・ビダンの誕生日とされています。ガンダムシリーズの主人公のなかでも人気が高いといわれているカミーユ。その経歴と活躍を振り返ってみましょう。
カミーユは小説版によると、地球生まれのコロニー育ち。出身は東京近郊の新座市らしいです。父親のフランクリン、母親のヒルダはともに地球連邦軍の技術士官で、家庭をかえりみない仕事人間でした。そのことがカミーユに孤独な子供時代を過ごさせ、両親への不満を蓄積させることになります。
また、「カミーユ」という名前が女性のものという意識が強かったため、必要以上に劣等感をいだき、小型飛行機のホモアビスやジュニア・モビルスーツの操縦、空手部に入るなどといった男性的な趣味に傾倒しました。こういった内に溜めたストレスが、カミーユが本来持つやさしさとは別に、ささいなことから感情的な怒りに身を任せる暴力的な性格を生んだのかもしれません。
この「感情的になりやすい気質」が、因縁の相手となるジェリド・メサとのトラブルを生み、捕らえられたMPへの恨みからガンダムMk-IIの強奪、それを持って反地球連邦組織エゥーゴに参加するきっかけとなりました。物語的にはそう見えませんが、この経緯だけを見ると、些細な過ちから不良化の道へと、斜面を転がるように進む少年を思わせる行動です。製作当時、富野由悠季監督がカミーユに今の少年像を投影した部分が、こういうところにあるのでしょう。
エゥーゴに参加してからのカミーユはニュータイプを期待されるエースとして活躍しました。それゆえの勘違いや増長もありましたが、出資者であるウォン・リーの「修正」が変わるきっかけになります。そして、地球で出会った強化人間フォウ・ムラサメとの出会いが、カミーユを大きく成長させることになりました。
フォウとの出会いで自分の名前に対するコンプレックスが消え、人の生き死にや戦争への向き合い方をあらためて考えるようになったカミーユですが、まだ少年がかかえるには大きすぎる問題だったのです。戦争という過酷な環境のなかで、周囲の大人たちもカミーユの抱えた問題と真摯に向き合えず、本人も大人であろうとするがゆえに悩みを打ち明けることなく内に抱え込んでいきました。
それが破裂してしまったのが、グリプス2をめぐる最終決戦です。ニュータイプとして超常的な力を発揮したカミーユは己の限界を超え、パプティマス・シロッコの怨念までをも取り込んだ結果、戦争としては勝利をつかみますが精神崩壊という結果を迎えました。
こうしてカミーユは戦場から去っていきましたが、続編である『機動戦士ガンダムZZ』では元に戻ったように思える描写が見られます。そして、その後の歴史には大きく関わることなく表舞台から姿を消したようでした。