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『Zガンダム』悲劇の主人公、カミーユの運命は「時代」が変えた。「今の子供たちは…」

時代とともにカミーユの運命が変わる

TVアニメ版でカミーユが精神崩壊するきっかけを作った、パプティマス・シロッコ。画像は「機動戦士Zガンダム DVD Vol.13」(バンダイビジュアル)
TVアニメ版でカミーユが精神崩壊するきっかけを作った、パプティマス・シロッコ。画像は「機動戦士Zガンダム DVD Vol.13」(バンダイビジュアル)

 実は、『Zガンダム』最終回はカミーユの死で幕を下ろす予定もあったそうです。しかし、これを聞いたカミーユの声優である飛田展男さんは「死んでたまるか」と熱のある演技を続けました。これを見た富野監督は「キャラクターに根性があったから殺せない」と、実際に放映されたストーリーへと変更したそうです。

 放映当時、序盤で見せたカミーユのエキセントリックな行動には批判も少なくなく、当初はファンからの人気も高くありませんでした。しかし、劇中で見せる活躍を見ているうちにカミーユへの評価は高まります。放映のほとんどを占めた1985年ではなく、翌年1986年のアニメージュ主催のアニメグランプリ男性キャラ部門で1位だったことからも、尻上がりにその人気が高まったことがわかるでしょう。

 また、富野監督から「カミーユが宇宙世紀で最高のニュータイプ」であることが言及されています。そのことは「バイオセンサー」というシステムを使い、Zガンダムというマシンの限界を超えて数々の超常的能力を起動させたことからもわかりますが、カミーユのニュータイプ能力は他のニュータイプのそれとは異質のものがありました。

 富野監督に「学習が出来、本当の意味でのニュータイプとなれたカミーユと比べれば、ニュータイプの代表例であるアムロでさえも、学習がないためオールドタイプとして死んでいくしかない」とまで言わせるカミーユですが、前述したように未発達のままの心には大きすぎる力だったと言えるかもしれません。

 例えて言うならば、飛行機のエンジンを乗せた乗用車のようなもの。強力すぎる力に身も心も追いつかないのでしょう。それゆえに膨らみすぎたカミーユの力はシロッコの一刺しでパンクしたと考えられます。もしもカミーユの心に余裕があれば、結果は違ったものになるのかもしれません。

 そのような「IF」を映像化したものが、劇場版三部作『機動戦士Ζガンダム A New Translation』シリーズです。ここでのカミーユには心の余裕があり、周囲もまたTV版とは違った柔らかさがありました。その結果、ラストは大きく異なり、カミーユはストレスをためて精神崩壊することなく、無事にアーガマへと帰還しています。

 このことについて富野監督は、TV版の放映当時と違って近年ではカミーユのように感受性が強く、激情的で情緒不安定な子供たちが増えている。そのため、そういう子供たちへのメッセージとしてカミーユの受けとめ方を半歩ずらし健やかに変えた。……そう語っていました。

 この解釈を変えたことについてさまざまな意見がありますが、近年の穏やかな雰囲気を持つようになった富野監督らしい改変だったと思います。当初は戦死する予定だったカミーユが精神崩壊という形で生きのび、近年になってから五体満足で生還という形を取ったことを思うと、映像のなかの産物であるカミーユがまるで自分の意思で成長したようにも感じられませんか?

(加々美利治)

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