アニメ化40周年の『あさりちゃん』は逸話だらけ 視聴率争いを制し、ギネス記録も…
あさりちゃんは「永遠の小学4年生」じゃなかった?

ファンには周知の事実ですが、『あさりちゃん』の作者・室山まゆみ先生は姉妹共同のペンネームで、お姉さんの本名がそのままペンネームになっています。マンガのなかでもたびたび登場していることからファンには常識ですが、人の名前ということから気づかない人も少なくありません。
実はデビュー当時、ギャグマンガは大の苦手だった室山先生は、少女漫画家あるいはホラー漫画家を志望していたそうです。『あさりちゃん』のなかで少女漫画タッチの絵が登場したり、ストーリーにホラー要素が強い回があったりするのは、そういった事情があるからかもしれません。
ギャグマンガにしては強烈なテイストがオチになることもありましたが、TVアニメではその部分がほのぼのとしたオチに変更されたこともありました。こういった部分が本作を単純な女子向けギャグマンガにせず、幅広い層に好感を持たれる作品に昇華したわけです。
『あさりちゃん』は前述した「コロコロ」以外にも、小学館系列のさまざまな雑誌で展開していました。少女漫画雑誌である「ぴょんぴょん」や「ちゃお」の他にも、教育誌「幼児と保育増刊号」に『カリスマ保育士あさりちゃん』という番外編を掲載しています。この他にも、同じくTVアニメ化された『どろろんぱっ!』とのクロスオーバー展開もありました。
また連載の長期化から、本作の主人公である浜野あさりを永遠の小学4年生と比喩する人がいますが、それは正確な表現ではありません。それぞれの学習雑誌であさりの年齢は違っているからです。
あさりの年齢は『小学一年生』では小学1年生、『小学六年生』では小学6年生と変化していました。そのため、初期のエピソードでは姉の浜野タタミがセーラー服を着た中学生になっているエピソードもあります。他にも『ハイスクールあさりちゃん』という、高校生になった浜野姉妹を描いた番外編マンガもありました。
これだけの人気作だった『あさりちゃん』は、1985年度小学館漫画賞を児童部門で受賞しています。また、2014年には二人組の女性作家による1コミックシリーズ最多発行巻数として、ギネス世界記録に認定されていました。この時に『あさりちゃん』は35年の連載に幕を閉じ、単行本は全100巻となっています。
こういった経緯で一応のピリオドを打った『あさりちゃん』ですが、これで終わりというわけではありません。現在でも公式サイトは定期更新されていますし、何よりも「あさりちゃん」名義でTwitterアカウントが存在していることをご存じでしょうか?
このTwitterはほぼ毎日更新され、ひとコママンガという形で『あさりちゃん』の新作が無料で見ることができます。Twitterでは時事ネタを取り扱うことも多く、室山先生たちがほぼ毎日、世相を見て描いていると推測され、その律義さはファンとしては頭が下がる思いでしょう。
好きな作品というものはいつまでも終わってほしくないと思うものですが、こうして一応の完結を迎えてからも作品が見られるというのは、いちファンとして恵まれていると感じます。室山先生たちには、今後もできる範囲で『あさりちゃん』の発信をお願いしたいと思います。
(加々美利治)