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原作クラッシャーと呼ばれ…GONZO石川社長が語る、山あり谷ありアニメビジネス「真っ先に崖から落ちるのが役目」

動画配信時代、アニメ制作会社に恩恵は?

 現在のアニメ産業は、ネット配信時代に突入しています。動画配信サービス・Netflixをはじめとする海外資本によって、アニメ業界が潤っているという話もありますが、一方で現場のアニメーターには還元されない、といった意見もあります。石川氏に実情をうかがうと「制作会社がIPを持てるようになった」とメリットを強調します。

「Netflixなど動画配信会社は、昔のテレビ局と同様、全ての権利を持っても意味がないので配信権だけでいい。なので、再びアニメ制作会社がIPを持てるようになってきています。例えば、動画配信の会社が独占配信権を、製作費の7割で買うとしましょう。

 そうすると、制作会社はそのお金を製作費として出資して製作委員会に自ら加わればいい。配信系の会社は大抵、納品後じゃないとお金を払わないため、つなぎ融資が必要ですが、それも今はけっこう利用されるようになってきています」

「ディスク販売中心のビジネスモデルの時代が、一番制作会社にとって苦しい時期だったと思う。しかし、当時はそうならざるを得ない社会構造だったんです」と2000年代のアニメ業界を分析する石川さん

 GONZOはこれまで数多くのアニメを、自ら製作費の一部を調達する形で制作してきたため、今でもIPを保有しているタイトルが数多くあります。石川氏は、2000年代からそういう意識を持って運営していたのはGONZOくらいだといい、実際そうしたIPがロングテールで収益を生み出し続け、現在のGONZOのビジネスを支えていると話します。

●デジタル化の先駆者・GONZO

 GONZOは、IP活用以外でも常に先進的な試みを続けてきた会社です。同社は1992年、ガイナックスを退社した制作プロデューサーの村濱章司氏を中心に設立されました。設立当初からデジタルアニメーションに取り組み、1998年のOVA『青の6号』をフルデジタルアニメとして制作し有名になりました。

 同時期に株式会社ディジメーションを設立した石川氏は、ほどなくして村濱氏と出会い両社が合併。2000年2月に持株会社GONZO・ディジメーション・ホールディング(GDH)を設立します。ベンチャーキャピタルから資金調達し、東証マザーズにも上場するなど、他のアニメ制作会社とは一線を画した事業展開を行い、「萌え銘柄」の筆頭にも挙げられていました。

ステージの花形「カレイドスター」を目指し、あらゆる試練を乗り越えていく少女を描いた青春サクセスストーリー。監督は『美少女戦士セーラームーン』『おジャ魔女どれみ』『ケロロ軍曹』などを手掛けた佐藤順一氏。『カレイドスター』(C)2003 佐藤順一・HAL・GONZO/カレイドステージ

●日本アニメの世界配信「クランチロール」とGONZOの意外な関係

 GONZOは、アニメの海外展開を積極的に推し進めたことでも知られています。今、日本のアニメはクランチロールなどの動画配信サイトを通じて、日本での放送と同日に世界中で観られています。クランチロールは2006年の立ち上げ当初、著作権侵害のファン投稿が行われていましたが、同サービスの合法化にも石川氏は関わっています。

「クランチロールの違法アップロードは、社内でも問題になっていました。でも、僕は多くの人に求められている証だと思ったので、運営者に会いに行ったんです。彼らも問題は認識していて、その頃ベンロックというベンチャーキャピタルから資金調達の話があって、サービスの合法化が出資条件だったようです。

 そんな時に、僕が出資して、そのお金でうちの作品の配信権を買ってもらうことにしました。そうなればお金は行って来いで株も手に入るから損はしません。テレビ東京がクランチロールと提携する1年前ぐらいのことです」

「次のメジャープレイヤーになるのは、世の中が大きく変わる波に最初に乗った人」と、石川さんはいち早く新しいことに挑戦する意義を語る。

 クランチロールは、今では当然のように日本での放送と同日に英語字幕のついた作品を配信していますが、それはGONZOの作品から始まったのです。

●『アフロサムライ』誕生秘話…サミュエル・L・ジャクソンから直々にプレゼンを受ける

 海外への挑戦という点で、GONZOにとって重要な作品が『アフロサムライ』(2007年)です。

父を殺されたアフロの黒人侍の復讐の旅を描く。2007年公開の第1作に続き、2009年には続編『アフロサムライ:レザレクション』が制作された。『アフロサムライ』(C)2006 岡崎能士・GONZO

 この作品は、岡崎能士氏の自費出版マンガを原作にした作品で、ハリウッドスター、サミュエル・L・ジャクソンが出演していることで有名です。

 石川氏はこの作品の企画・制作を通して、「文化の在り方」の「在るべき姿」に確信を得たといいます。

「あの作品は、アニメ好きのハリウッドのプロデューサー、エリック・カルデロンが中野ブロードウェイで見つけたマンガをアニメ化したいと言い出したのが始まりです。まず、パイロットフィルムを作ってアメリカのエージェントに持っていきました。

 その後、サミュエル・L・ジャクソンが気に入ったらしく、『プレゼンしたいからトロントの撮影現場まで来てくれ』と言われました。現場に行ったら、ディレクターズ・チェアに座らされて、カットの声で撮影を終えたサミュエルが衣装のままこちらに向かってきて、なぜ俺が『アフロサムライ』をやるべきなのかをプレゼンし始めたんです(笑)。さらには、人気ラッパーのRZAからも電話がきて『アフロサムライ』の音楽はオレが手掛けると言い出しました」

車のボンネットで撃たれるシーン撮影の直後に、着替える間もなく『アフロサムライ』のプレゼンを始めたサミュエル・L・ジャクソン(写真:時事通信フォト)

 石川氏は「グローバルな文化のつながり」をこの時、実感したといいます。

「文化って国に基づいていると思いがちですけど、本当はコミュニティベースであるべきで、こうやって世界中の趣味嗜好が同じ者同士でつながって、そこから生まれた何かが文化なんだと思ったんです」

 今やSNSや動画配信サービスによって、世界中で同じ趣味を持つ者同士がつながる時代。石川氏はそんな時代の到来もいち早く実感していたようです。

●クラウドファンディングの先駆け? 「個人向けアニメファンド」の失敗

 数々の先駆的な挑戦で現在のアニメ産業のスタンダード作りに貢献してきたGONZOですが、一方で多くの失敗も経験しています。

 ファンから資金を募るクラウドファンディングは、日本でも定着しつつあります。GONZOは、そんなクラウドファンディングのプラットフォームが普及する以前から、ファンから資金を調達する試みを行っていました。『バジリスク ~甲賀忍法帖~』(2005年)では、「アニメファンド! バジリスク匿名組合」という個人投資家向けのファンドを作り、ひと口5万円、償還金額はDVDの国内売り上げによって賄うという条件で資金を調達します。

原作:山田風太郎、漫画:せがわまさきによる人気マンガを原作に、愛し合いながらも戦わざるを得ない甲賀の弦之介と伊賀の朧を描いた大河伝奇。『バジリスク~甲賀忍法帖~』(C)山田風太郎・せがわまさき・講談社/GONZO

 ファンの力でアニメを作る新しい試みでしたが、結果は資金を回収するには至りませんでした。

 この時、石川氏は分散した権利を管理することの大変さを痛感します。

「当時は個人投資家からお金を集めるには証券法があるため、証券会社でないとできませんでした。そうなると会計士とか、作品づくりと関係ない費用がどんどん増えるんです。会社が上場するとわかるんですが、年間2億円くらい、そういう余計な出費が発生します。だからファンドを行う場合、短期間で区切らないといけない。今でも『バジリスク』は儲かっていてお金は入ってくるのですが、ファンドを維持できるのはせいぜい5年くらいでした」

【画像】名作ぞろい! GONZOの代表作

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