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漫画『AKIRA』で描かれた「2019年の東京」の正体とは? 斬新だった「未来」の世界観

「東京五輪開催を予言していた」とネット上で話題になり、東京の再開発をテーマにしたNHKのスペシャルシリーズ『東京リボーン』に大友克洋氏らが参加するなど、いまなお注目を集めるマンガ『AKIRA』。そこで描かれている「未来」とは、どんなものだったのでしょうか。連載当時から同作を読んでいたライターの倉田雅弘さんが語ります。

戦後から80年代までが混在する、オルタナティブな「未来」

1988年に公開された劇場アニメ『AKIRA』の4Kリマスター版(2020年4月24日発売予定)。3月14日(土)開催の「東京アニメアワードフェスティバル」のオープニングとして上映が予定されている (C)1988マッシュルーム/アキラ製作委員会
1988年に公開された劇場アニメ『AKIRA』の4Kリマスター版(2020年4月24日発売予定)。3月14日(土)開催の「東京アニメアワードフェスティバル」のオープニングとして上映が予定されている (C)1988マッシュルーム/アキラ製作委員会

「2020年の東京オリンピック開催を予言していた」と、再び注目を集めているマンガ作品が、1982年に講談社「週刊ヤングマガジン」で連載開始した『AKIRA』です。

 同作品の前半にあたる単行本PART 1~3を改めて読み直してみると、金田のバイクや、アーミーのフライングプラットホームや炭団といったガジェット、巨大構造物じみたビル群こそ近未来感を醸し出しているものの、町並みの過剰な落書きや寂れた場末のスナック、乱雑な路地裏や木造アパートなどが点在している「ネオ東京」の風景からは、むしろ強い昭和の匂いが強く感じられることに驚きます。

 しかし、本稿を書くために集めた資料で、作者の大友克洋氏は『AKIRA』についてこう語っています。

「この東京を別のかたちで語り直してみたいという欲望があったんだろうな。(中略)戦後の復興期から東京オリンピックの頃のような混沌とした世界を構築したかったんだよ」(『美術手帖』1998年12月号)

 確かに、巨大構造体群によって東京湾上に構築されたネオ東京は、松永安左エ門が主宰した私設シンクタンク産業計画会議が1959年に発表した、東京湾3億坪のうち2億坪を埋め立てて国際貿易センターを中心に経済外交の基地を作る“ネオ・トウキョウ・プラン”や、1961年に丹下健三研究室が発表した、東京と木更津を直結したハイウェイを軸にオフィスや住宅などを展開する、有機的な都市機能の拡張を掲げた「東京計画1960」の影響が感じられます。

 作中に登場するミヤコの神殿も、丹下健三が設計を手がけて1964年に竣工された東京カテドラル聖マリア大聖堂と、東京オリンピック国立屋内総合競技場(正式名称:国立代々木屋内総合競技場)を融合させたものでしょう。

 また、『AKIRA』で描かれている昭和の要素は風景だけではありません。政府打倒のため暗躍するケイたち反政府ゲリラは、60年代に過激な運動を繰り広げた左翼団体を連想させますし、バイクを駆って敵対するチームと抗争を繰り返す金田たちは、80年代初頭に全盛期を迎えた暴走族の姿が被ります。

 すでに作中の時代設定である2019年も過ぎた現在からは、『AKIRA』の世界は歪んだ高度成長期を背景に、戦後から連載当時の「現在」である80年代までの要素が複雑に入り混じったもうひとつの日本、「1982年に起こった第三次世界大戦」によってリセットされたオルタナティブな昭和史が凝縮された世界にも見えます。

 ちなみに『AKIRA』の時代設定が2019年なのは、連載開始時の1982年に終戦の1945年からの年月(=38年)を足したからとする説もあります。『AKIRA』の連載は長く、アニメ映画の制作のため休止していた期間を含めて、1982年から1990年までの9年にわたるのですが、昭和が終わる1989年の前年に、大友克洋氏自身が監督を務めた映画『AKIRA』が公開され、翌年マンガが最終回を迎えたのも、どこか象徴的です。

【画像】4K映像で蘇る『AKIRA』 迫力の暴走シーンと「ネオ東京」(7枚)

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