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【追悼】アニメ作品にも影響与えた大林宣彦監督、「映像化困難」なマンガへの挑戦も

多くの映画ファンに愛され続けた大林宣彦監督が亡くなりました。『時をかける少女』や『転校生』など、後のアニメーション作品にも多大な影響を与え、実写化は難しいと思われていたマンガの映画化にも果敢に挑むなど、実験精神にあふれたクリエイターでした。人気マンガを原作にした映画作品から、大林監督の作家性を振り返ります。

『時をかける少女』『転校生』が後世に与えた影響

2020年4月10日に亡くなった、大林宣彦監督
2020年4月10日に亡くなった、大林宣彦監督

 大林宣彦監督が、2020年4月10日(金)、肺がんのために亡くなりました。享年82歳。2016年8月に「余命3ヶ月」と医師から宣告されながらも、最期まで意欲的に映画制作を続けました。故郷の広島県尾道市を舞台にした“尾道三部作”『転校生』(1982年)、『時をかける少女』(1983年)、『さびしんぼう』(1985年)のほか、数多くの作品で映画ファンを魅了しました。

 大林監督は自主映画、CMディレクターを経て、ホラーファンタジー映画『HOUSE ハウス』(1977年)で商業監督デビューを果たしました。『HOUSE』は夏休みに避暑地を訪れた美少女たちが、泊まっていた古い屋敷にみんな食べられてしまうという斬新な内容でした。それまでの日本映画にはないポップな映像表現が話題となり、スマッシュヒットを記録します。

 以降、大林監督は、薬師丸ひろ子さんが主演した『ねらわれた学園』(1981年)や石田ひかりさんが主演した『ふたり』(1991年)など、人気アイドルを起用した優れたファンタジー映画を撮ることになります。小林聡美さんが中学生の時に主演した『転校生』も忘れられない一本です。思春期の少年少女の心が入れ替わる『転校生』は、新海誠監督の大ヒットアニメ『君の名は。』(2016年)にも大きな影響を与えています。

ブラック・ジャックが脇役で登場した『瞳の中の訪問者』

ブラックジャックが実写映像で登場したことでも注目される、『瞳の中の訪問者』
ブラックジャックが実写映像で登場したことでも注目される、『瞳の中の訪問者』

 実験精神が旺盛な大林監督は、映像化が難しい人気マンガの映画化にも挑戦しています。デビュー2作目となる『瞳の中の訪問者』(1977年)は、手塚治虫氏の医療マンガ『ブラック・ジャック』の一編『春一番』を原作にした実写映画です。

 千晶(片平なぎさ)は親友の京子(志穂美悦子)とインターハイを目指して、テニスの練習に打ち込んでいました。ところが練習中の事故によって、片目を失明してしまいます。そこで登場するのが、無免許医のブラック・ジャック(宍戸錠)です。外科医として天才的な腕前を持つブラック・ジャックによる角膜移植手術は成功し、千晶の視力は回復します。しかし千晶の目には、他の人には見えない幻の男性(峰岸徹)が映るようになります。やがて、千晶は幻の男性に恋心を抱くようになるのでした。

 原作の主人公であるブラック・ジャックは、『瞳の中の訪問者』では脇役扱いでした。しかも、顔の半分は原作どおりに青色にメイクされており、映画評論家からも原作ファンからも酷評されてしまいます。でも、当時新人だった片平なぎささんとアクション女優としてのイメージが強かった志穂美悦子さんからは、健康的な色香があふれ、ふたりが並んでシャワーを浴びるシーンなどはとても美しく撮られています。

 そして何よりも、幻の異性に恋をしてしまうというヒロインの心理は、多くの大林作品につながるテーマとなっています。

【画像】大林宣彦監督が遺した最終作は、「映画館」が舞台?(8枚)

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