レオは人間に食べられた… 『ジャングル大帝』原作の衝撃的な最終回
手塚治虫先生の代表作『ジャングル大帝』の原作マンガの最終回を知っていますか? 実は、アニメ版の幸せな結末と違い、とても悲しいラストを迎えていました。具体的に原作とアニメ版でどのような違いがあったのでしょうか?
子供に配慮して刺激が強すぎるラストをアニメで改変?

マンガの神様と呼ばれる手塚治虫先生の代表作『ジャングル大帝』は、1965年のTVアニメ放送開始から60周年を迎えます。令和に観返しても驚かされる作画クオリティと壮大なストーリー、ライオン「レオ」の勇敢な姿が当時の子供たちを夢中にさせた作品です。
1950年から1954年まで月刊誌「漫画少年」(学童社)で連載され、日本のTVアニメ初のカラー作品として1965年に『ジャングル大帝』、1966年に続編『ジャングル大帝 進めレオ』が放送されました。
TVアニメ『進めレオ』のラストはハッピーエンドでしたが、原作マンガでは衝撃的な結末を迎えていた事実を知っていましたか?
そもそも『ジャングル大帝』は、人間に育てられたレオが、自然に戻り、弱い動物たちを守るために立派なジャングルの王者として成長していく物語です。
物語後半でレオは立派な雄ライオンになり、妻「ライヤ」との間に長男「ルネ」と長女「ルッキオ」が誕生しました。しかし、ルネは人間に捕まり、ライヤは動物だけが感染する「死斑病」にかかって命を落とします。ルッキオも「死斑病」にかかりましたが、人間が施した血清によって救われました。そして、レオは助けてくれた恩人「ヒゲオヤジ」が求める幻の石「月光石」探しに付き添うのです。
無事に「月光石」は見つけたものの下山中に猛吹雪が発生し、ヒゲオヤジ一行はレオとヒゲオヤジ以外、壊滅状態となりました。食料が尽き、絶体絶命のなかで、レオはヒゲオヤジに自身を食べて毛皮をまとうようにいいます。しかし、ヒゲオヤジは首を縦に振らないため、レオはわざとヒゲオヤジに襲いかかったのです。その結果、レオの思惑通りにヒゲオヤジはレオを殺め、レオの肉を食べて毛皮をまとったことでヒゲオヤジは下山に成功します。
なお、ヒゲオヤジは帰る途中に、人間から逃げ出してきたルネと出会います。毛皮になったレオを見たルネは、その後、レオの遺志を継いでジャングルの王になるのでした。
手塚治虫公式WEBサイトによれば、手塚先生は物語の結末について「宿命的な悲壮感よりも、未来への期待を歌い上げて終わりたかったのです。滅びても消え去っても、なおも新しい生命が自然に向かっていどむ力に敬意を表したかったのです」と語っていました。
その一方で、TVアニメの『進めレオ』は、原作では離れ離れだったルネがずっと家族と一緒に暮らしていたり、死斑病にかかったライヤが一命を取り留めたりと、幸せな展開が続きます。
また「ムーン山」に登る流れは一緒ですが、反対を押し切ってルネが強引に付き添います。原作と同じく「月光石」を手に入れた後、猛吹雪によってヒゲオヤジ一行は壊滅しますが、レオとヒゲオヤジ、ルネが生き残りました。そしてルネが、意識が遠のくヒゲオヤジとレオをロープにくくりつけ、引っ張っていくことで下山に成功します。
誰も命を落とすことなく生還する結末は、メイン視聴者である子供たちに配慮し、原作の悲しいラストに手が加えられたのかもしれません。ちなみに1997年に公開された劇場版アニメでは、ほぼ原作通りの結末を迎えています。
(LUIS FIELD)