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“皆殺し”でなかった富野監督『ザブングル』の演出。「はっはっは、アニメだからね!」

1982年~83年にTV放映された『戦闘メカ ザブングル』は、富野由悠季監督が本名の「富野喜幸」から改名した記念すべき第1作です。富野監督のオリジナル企画ではなかったために、『ガンダム』や『イデオン』の影に隠れがちですが、ロボットアニメの常識を破る意欲にあふれていました。

アニメ職人からアニメ作家へと変身

『ザブングル グラフィティ』 DVD(バンダイビジュアル)
『ザブングル グラフィティ』 DVD(バンダイビジュアル)

「皆殺しの富野」

 人気アニメ監督・富野由悠季氏に名付けられた異名です。『無敵超人ザンボット3』『機動戦士ガンダム』(テレビ朝日系)や『伝説巨神イデオン』(テレビ東京系)など、富野監督の代表作はメインキャラクターたちが次々と死んでいくことから、富野監督はそう呼ばれるようになりました。

 人気キャラクターたちの壮絶な死は視聴者に衝撃を与えましたが、戦場の非情さをリアルに追求した富野作品は、TVアニメを大人も鑑賞できる深みのあるものへと押し上げていきました。

 1972年にTV放映された監督デビュー作『海のトリトン』(TBS系)から、本名の「富野喜幸」として監督名がクレジットされてきましたが、『機動戦士ガンダム』劇場版三部作(1981年~1982年)の大ヒットを経て、1982年2月から放映スタートした『戦闘メカ ザブングル』(テレビ朝日系)では「富野由悠季」と表記が変わります。アニメ職人・富野喜幸から、アニメ作家・富野由悠季へと変身を遂げたと言えるのではないでしょうか。

 前作『イデオン』でシリアスさを極めた富野作品ですが、『ザブングル』は雰囲気がガラッと変わりました。全50話がTV放映された『ザブングル』は、富野監督が思い切った編集を施した『ザブングルグラフティ』(1983年)として劇場公開されています。2021年6月13日(日)の夜7時からBS12で放映される、『ザブングルグラフティ』の見どころを紹介します。

『未来少年コナン』を思わせる、陽気なコメディ

 丸っこい顔で、行動力旺盛なジロン・アモス(CV:大滝進矢)は、およそSFアニメの主人公らしからぬ非イケメン系のキャラクターです。舞台となるのは「惑星ゾラ」と呼ばれている地球。どんな悪事を働いても、3日過ぎれば免罪になるという、西部劇のような荒々しい世界を生き抜くタフな少年です。

 両親を殺されたジロンは、3日間以上経っても敵討ちを果たそうとします。盗賊団を率いる少女ラグ・ウラロ(CV:島津冴子)たちと手を組み、最新のウォーカーマシン「ザブングル」を盗み出すことを試みます。超わがままなお嬢さま、エルチ・カーゴ(CV:横尾まり)との出逢いも待っています。

 ジロンの復讐心が物語を動かしていきますが、やがて闘いは惑星ゾラを支配する富裕層「イノセント」と支配される庶民階級「シビリアン」の階級闘争へと発展。物語設定はなかなかハードな一方、宮崎駿監督の人気TVアニメ『未来少年コナン』(NHK総合)を思わせる、陽気なアクションコメディとして演出されていました。エルチやラグたち女性キャラクターが、生き生きとしていたのも印象的です。

 キャラクターデザインは、『イデオン』でも富野監督とタッグを組んだ湖川友謙氏。メカデザインは『ガンダム』でおなじみの大河原邦男氏に加え、オリジナルビデオアニメ『機動警察パトレイバー』(1988年~1989年)で注目を集めることになる出渕裕氏も参加していました。

 人気作曲家・馬飼野康二氏によるテーマ曲「疾風ザブングル」が、今も耳に焼き付いている人も多いのではないでしょうか。従来のロボットアニメのパターンを払拭する前向きな意欲が、作品全体から感じられます。

【画像】印象に残るデザイン!『ザブングル』に搭乗したメカたち(5枚)

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