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1970年代ヒーローの「退場エンド」には時代の影響も? 多様化した現代の「結末」に思うこと

ヒーロー作品の最終回に影響を与えた出来事とは?

宇宙空間でラスボス最期の大爆発に巻き込まれたが、無事に生還したバロム・1が描かれる、『超人バロム・1』DVD2巻(東映ビデオ)
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 1970年代というと、その30年ほど前の日本はまだ戦時中でした。これを2025年という現在の時間で換算すると、1990年代くらいの話だと仮定できるでしょう。そうすると、戦後復興はなされたという人もいましたが、その時代に子供であった大人には、ついこの間だと思えてしまう程度の感覚です。

 この太平洋戦争で語られることが多いもののひとつに「神風特攻」がありました。自分の命と引き換えに敵に突撃する戦法です。これに関しては人それぞれ、さまざまな意見があることでしょう。

 これとヒーローたちの戦いを結びつけるのは無粋なことと承知はしています。さらに当時のヒーロー作品を制作した人に、なかなか正面からその話題を聞くことはできません。しかし、意外なことに一部のスタッフの方から口を開いてくれたことがありました。

 いわく「美化する気は毛頭ないが、どこかに影響はあったのだろう」……そう語ってくれた方が何人かいたのです。これに関して考察していくと、戦時中に子供だった方は神風というものがどうやら脳裏にしみついていたのかもしれません。

 実際、戦時中の子供だった筆者の親の世代に話を聞くと、意見はさまざまなものの影響は強くあるという感じでした。そう考えていくと、ヒーローが敵を道連れにしてでも戦うというのはごく自然に出てきた選択肢なのかもしれません。

 前述したように影響を示唆したスタッフの方々は、みなさん無意識のうちにドラマを考えていくと出てきた発想だといっていました。子供時代に受けた影響が知らないうちに出てきたのでしょう。

 もっとも、ヒーローがそうやって悪を滅ぼした後、無事に帰ってきた姿を見せたこともありました。『超人バロム1』や『変身忍者嵐』などです。フィクションの世界なのですから、たとえご都合主義でも無事に帰還していいのではないでしょうか。

 そして現在、平和な時代が長く続いた日本では子供の頃に影響を受けた作品も増えました。その選択肢の多さが、物語の結末の多様化にもつながったと筆者は考えています。ヒーローが去っていく風潮から、平和になった世界を楽しみ、心安らぐ場所へと帰っていくという流れには、そんな理由があるのかもしれません。

(加々美利治)

【画像】「いま思い出しても切ない」これが「特攻エンド」で去っていった70年代ヒーローたちです(5枚)

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加々美利治

TVマンガ研究家。おもにトレーディングカードやシールといったアイテム関係のテキスト制作に携わる。21世紀以降は東映アニメーションやバンダイナムコのwebサイトでのライティングを請け負う。近年はネット記事執筆へと軸足を移す。