萩原健一×水谷豊『傷だらけの天使』最終回の衝撃 脚本にない即興演出とは?
『太陽にほえろ』の「マカロニ刑事」で人気を博した萩原健一さんが、さらにその魅力を爆発させたのが『傷だらけの天使』です。特撮ドラマ『バンパイヤ』の水谷豊さん、『怪奇大作戦』の岸田森さんら、共演陣も個性派ぞろいでした。1970年代を代表する「伝説のドラマ」と称されています。伝説化した秘密を探ります。
「新海誠アニメ」のロケ地にもなった雑居ビルが舞台

萩原健一さん、水谷豊さんが共演した連続ドラマ『傷だらけの天使』(日本テレビ系)は、1974年10月から75年3月にわたって全26話が放映された「伝説のドラマ」です。
2025年7月30日、NHK BSのドキュメンタリー番組『アナザーストーリーズ 運命の分岐点』で、「傷だらけの天使 なぜ伝説になったのか」が放映されました。8月4日(月)の午前11時15分から再放送される予定なので、見逃した方はチェックしてみてください。
放送から50年が経った『傷だらけの天使』ですが、音楽は人気アニメ『名探偵コナン』(日本テレビ系)のテーマ曲でおなじみの大野克夫氏です。主人公たちが暮らすペントハウスがあった雑居ビルは、解体される直前に新海誠監督の大ヒットアニメ『天気の子』(2019年)のロケ地にもなっています。
今なお、カルチャーシーンに多大な影響を与え続けている『傷だらけの天使』(以下、『傷天』)が残した伝説を振り返ります。
トマトを丸かじりするオープニングがかっこよかった
修(萩原健一)と弟分の亨(水谷豊)は、探偵事務所を経営する綾部(岸田今日子)のもとで下働きしています。都心のペントハウス暮らしといっても、古ぼけたビルの屋上にあるプレハブのような部屋です。
仕事内容はひどく地味で、汚れ仕事ばかり。また、修も亨も情に流されやすいために、お金儲けにはちっとも結びつきません。
いつも金欠状態の修と亨ですが、それでも男ふたりの生活は自由気ままで楽しげでした。寝起きの修がトマトや魚肉ソーセージを朝食代わりに丸かじりし、瓶入りの牛乳の蓋を口で開けて飲むオープニングは、当時の子供たちにはひどくかっこよく映りました。ペントハウス暮らしに、大いに憧れたものです。
井上堯之バンドによる軽快なメインテーマが流れるオープニングを演出したのは、SFアニメ『地球(テラ)へ…』(1980年)などを撮ることになる恩地日出夫監督でした。他にも『仁義なき戦い』(1973年)や『魔界転生』(1981年)などのヒット作で知られる深作欣二監督、新感覚時代劇「必殺」シリーズの工藤栄一監督ら、そうそうたるスタッフが参加していました。深作監督は予算オーバーを気にせず、面白いシーンを撮ることにこだわったそうです。
ショーケンこと萩原健一さん、このドラマを最後に俳優引退を考えていた水谷豊さんもアドリブでの演技を披露し、ふたりの掛け合いは評判となりました。スタッフもキャストも、どこまでも面白いことを、従来のTVドラマにはないものを競い合うように挑戦していたようです。
そんな撮影現場の自由で熱い空気が、『傷天』には漂っていました。