巨匠・松本零士の「宇宙バカ一代」伝説 弟は工学博士で、リアル「宇宙兄弟」だった?
『銀河鉄道999』『宇宙海賊キャプテンハーロック』などのSFマンガで、宇宙を身近なものに感じさせてくれ、無限に広がる夢を見させてくれた松本零士先生は、自身も幼い頃から宇宙に魅せられてきたそうです。果てない世界を思い続ける松本先生の「宇宙バカ一代」伝説をご紹介します。
少年時代に宇宙や「ワープ」の概念を学んだ、1冊の本

『銀河鉄道999』『宇宙海賊キャプテンハーロック』など、宇宙を舞台にした数々のSFマンガで私たちの目を広大な世界に向けてくれた松本零士先生。作品群の魅力はいまだ色あせることなく、代表作『銀河鉄道999』は連載開始から45年目の2022年に、本格ミュージカル作品として上演されることも発表されています。
そんな宇宙マンガの巨匠・松本先生は、自身も子どもの頃から宇宙が大好きで、「火星や金星、ブラックホールを探検するような宇宙に関わるマンガばかり描いていた」というほどのめり込んでいたそうです。かつて、空手に一生を捧げた大山倍達氏の生涯が『空手バカ一代』というマンガに描かれましたが、それにならい最上級の敬意をもって「宇宙バカ一代」と言いたいほど、宇宙を愛してやまない漫画家なのです。この記事では松本先生の宇宙愛伝説の一端をご紹介しましょう。
●小学生ですでに宇宙の総概念を理解していた?
父が陸軍のパイロットだったため、幼い頃から大空に興味をもっていたという松本先生。自分も空を駆け巡りたいという思いがやがて宇宙へと広がり、大いなる憧れをもって夜空の星を見上げていたそうです。でも、ぼんやりと眺めていただけではないのが、すごいところ。なんとお祖父さんの老眼鏡を組み合わせた自作の望遠鏡で、本格的な宇宙観測に励んでいたのです。
そんな松本先生は小学6年生のとき、運命の1冊とも呼ぶべき本と出会います。それはアインシュタインに直接教えを受けた宇宙物理学者の荒木俊馬博士が、子ども向けに著した天文書「大宇宙の旅」。後年同書が復刻された際に、「この本に巡り会えなかったら、確実に自分の歩む道は違ったものになっていただろう」との言葉を寄せたように、松本先生の人生を決める1冊となりました。この本で松本少年は宇宙の総概念を学び、後に作品にも登場する「ワープ」の概念まで、すでに理解していたのだそうです。
ちなみにこの本は、ひとりの少年が光の精や彗星と大宇宙を旅する物語なのですが、その少年の名前はなんと「星野」くん。そう、『銀河鉄道999』の主人公・星野鉄郎と同じ苗字なのです。松本先生自身も復刻版を読んで気づき驚いたそうですが、無意識に同じ名前にしてしまうほど、先生の心に染みこんでいた1冊なのでしょう。