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勝者よりも尊い? 『刃牙』でカッコ良く負けた戦士たち

戦いのなかで成長し、マッハ突きの最終形態を見せた男

主人公・刃牙が「気高い開花」と認める成長を見せ負けた愚地克巳。『範馬刃牙』17巻(秋田書店)
主人公・刃牙が「気高い開花」と認める成長を見せ負けた愚地克巳。『範馬刃牙』17巻(秋田書店)

●「戦いのなかで生まれた友情の証」愚地克巳:『範馬刃牙』17巻

 第3部『範馬刃牙』では、T-レックスを捕食していた「史」上最強の原人・ピクルが1億9000万年の眠りから覚め、刃牙たちと戦う「野人戦争(ピクル・ウォーズ)編」が描かれました。そのなかで行われたピクルvs愚地克巳の戦いは、作中屈指の名バトルとして高い評価を受けています。

 克巳は自身の代名詞である「マッハ突き」を強化するため、烈海王と協力し、さらに中国武術の頂点・郭海皇に師事。そして、本来は存在しない全身の細かい関節をイメージすることで、「マッハ突き」を衝撃波でガラスを割るほどに進化させ、ピクルとの戦いに挑みます。

 しかし、進化した「真・マッハ突き」は、音速を超えた衝撃で自身の拳をもズタズタに引き裂いてしまう技でした。克巳は手足を犠牲にしながら、進化したマッハ突きを繰り出します。そして、最後は腕を鞭のように引くことでさらなる速度を引き出す、マッハ突きの最終形態「当てない打撃」をさく裂させました。克巳は右腕の肉が吹き飛び、骨が露出するほどの犠牲を伴いダウンを奪ったかに見えたのですが……ピクルは眠っていただけでした。強靭な原始の肉体を持つピクルのダメージはすぐに回復する程度のもので、彼は血まみれの克巳をこれ以上攻撃する必要はないと判断していたのです。

 ピクルにとって、戦いとは狩りであり、倒した相手は食物です。ボロボロの克巳は、起き上がったピクルに右腕を食い千切られ、餌として食べられることを覚悟したところで意識を失いました。しかし、克巳の圧倒的な努力と犠牲を感じとったピクルは、倒れている克巳に祈りを捧げると、空腹のまま帰路につくのです。

 戦いのなかでさらなる進化を引き出すほど全てを出し切り、言葉の通じないピクルにも感銘を受けさせた克巳。「ピクル・ウォーズ編」の序盤で、勇次郎に突っかかった結果「だから相手にもされんのだ 俺にも刃牙にも父親にも」と辛らつすぎるひと言をもらっていた克巳でしたが、そこから一念発起し大覚醒を見せています。最強空手集団・神心会の長として、ひとりの空手家として、彼の心技が成長した姿が感動的な、見事な負け方でした。

 生まれ持った強さだけで戦う花山薫と克巳の戦いは、その究極系ともいえるピクルとの戦いにつながっており、龍書文の抜拳術も、刃牙と勇次郎の地上最強の親子喧嘩で使用されました。素晴らしい敗者が生まれた戦いは読者の心に残り、さらに別の戦いへとつながっていくので、彼らのその後には要注目です。

(SU_BU)

【画像】敗北(やぶ)れた背中がかっこいい!『刃牙』の負け名シーンを見る(6枚)

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