『海獣の子供』はこうして生まれた! スクリーンで味わう「生命誕生の神秘」
2019年6月7日から公開された劇場アニメ『海獣の子供』、その原作マンガは生命誕生の秘密に迫った、読者をゾクゾクさせる作品です。海洋学、民俗学、世界各地に残る神話や伝承など、多彩な要素を含んだ『海獣の子供』劇場版の見どころ、原作者・五十嵐大介氏が同作品を生み出した背景について解説します。
大自然を見つめ続けた漫画家

生命誕生の秘密や、宇宙の神秘さに触れることができる、壮大なスケールの劇場アニメーション『海獣の子供』2019年6月7日が公開されました。原作は、カルト的な人気を誇る漫画家・五十嵐大介が2006年〜2011年に発表した同名コミックです。
ジュゴンによって育てられた不思議な少年・海(うみ)と、学校にも家庭にも居場所のない孤独な少女・琉花(るか)とが出会い、大冒険へと繰り出す全5巻のストーリーが、上映時間の1時間51分にギュッと凝縮された形で描かれています。
五十嵐大介作品は、NHK朝ドラ『あまちゃん』でブレイクした直後の橋本愛が主演した『リトル・フォレスト 夏・秋』(2014年)、『リトル・フォレスト 冬・春』(2015年)が実写映画化され、韓国映画として制作された『リトル・フォレスト 春夏秋冬』(2018年)も2019年5月に日本で公開されました。地味なれど滋味豊かな『リトル・フォレスト』は、五十嵐作品の中で『海獣の子供』と並ぶ代表作です。
多摩美術大学を卒業後、『はなしっぱなし』で漫画家デビューを果たした五十嵐氏ですが、同作品の連載を終えた後、両親の故郷である岩手県へと移住し、山村でひとり暮らしを始めます。田畑を耕しての自給自足生活を送り、その体験をもとに『リトル・フォレスト』を描いたのでした。時に恐怖すら感じさせる大自然に囲まれた生活のなか、生きることの基本である「食べる」ことを主人公がしっかりと見つめる静謐な物語でした。
五十嵐氏はその後、愛と憎しみ、願いと呪いは表裏一体の関係であることを浮き彫りにした『魔女』を発表。山村での生活を終え、本格的に漫画の執筆に専念します。そして、20代の終わりに沖縄・八重山諸島へひとり旅をした際の記憶や感覚をマンガ表現として再構築し、『海獣の子供』を生み出していきます。
森の中でのスローライフ『リトル・フォレスト』 → 古今東西に伝わる神話や伝説集『魔女』 → 海洋を舞台にした壮大な冒険ファンタジー『海獣の子供』と、五十嵐ワールドは開花していったのです。


















