「別物すぎるけど最高」 原作者も好評のドラマ『ショムニ』最終回で訪れた「危機」とは?
江角マキコさん主演の大ヒットドラマシリーズ『ショムニ』は、現在も多くの人に愛されている実写作品です。長きにわたるシリーズの結末は、どんな話が描かれたのでしょうか。
原作と全く別物の名作シリーズ

フジテレビ系列でドラマ化された『ショムニ』は、週刊マンガ誌「モーニング」(講談社)で連載された安田弘之先生のマンガが原作の社会派コメディーです。1998年の初回放送以来、続編ドラマやスペシャルも制作され、長く愛される作品となりました。ドラマ版では原作から大幅にアレンジがあり、とくに結末は全く違うオリジナル展開で完結します。
原作は、落ちこぼれ社員が集められた「満帆商事 総務部庶務二課」(通称ショムニ)を舞台に、主人公「塚原佐和子」やショムニのリーダー「坪井千夏」たち女性社員が、理不尽な社内体制や上司の横暴に立ち向かう風刺コメディーです。
一方ドラマ版では、原作で主人公だった「塚原佐和子(演:京野ことみ)」は脇役に回り、代わって江角マキコさん演じる「坪井」が物語の中心人物として描かれるなど、キャラクターや設定に大きな変更が加えられていました。
また、原作では登場キャラが性に奔放で、千夏も過去にAVに出演していたなどの下ネタも多くありましたが、それらは大幅にカットされ「お仕事ドラマ」の要素が強い作品となっています。
物語序盤の、塚原がショムニに配属される点は原作と共通しつつも、配属された理由や以降の展開は大きく異なり、各話に実写版オリジナルのエピソードが盛り込まれていました。
そして原作の最終話では、坪井が塚原を次期リーダーに指名する結末でしたが、2002年放送の『ショムニFINAL』最終回では、坪井たちがショムニの廃止危機に直面する展開が描かれています。
メンバーは一時、警備や清掃部門へ異動させられますが、最後にはショムニ存続を勝ち取り、日常を取り戻すハッピーエンドで締めくくられました。ラストシーンで、千夏たちが応募したTV局のイベント「企業対抗20人21脚競争」の優勝を目指し、主要キャストが競技に挑戦する場面も見どころです。
原作ファンからは「原作と内容が180度違いすぎて戸惑った」「FINALから正義の味方みたいな路線になったのが気になる」といった一部否定的な意見もあったものの、「個性がありすぎるメンバーで全話飽きない」「千夏さんの脚立を担ぐ姿は原作と完全一致だった」と高く評価を受けています。
また、原作者の安田先生は、ウェブサイト「Souffle」でのコナリミサトさんとの対談で、ドラマ版について次のように語っていました。
「正直なところ、脚本の段階では面白いと思えなかったんだけど、どういう演技がつくか、どんな絵になるかで自分が想像し得なかったものになるから。(中略)脚本家の人の中に、自分の作ったキャラクターが生きてるってことですよね。『この人はこう言う』ってわかってくれてる。幸せなことですよね。(中略)僕の話もすごくよく聞いてくれたので『こういう人たちならまかせられる』と思えたんです」
こうした製作陣との信頼関係もあり、ドラマ版の大幅なアレンジは原作者からも好意的に受け止められたようです。
2013年には『ショムニ2013』が放送され、江角マキコさんの坪井役はそのままに、ほかのキャストには本田翼さん、べっきーさん、安藤サクラさん、三浦翔平さんらが出演していました。
時代背景も刷新された新生『ショムニ』は、ファンから「旧メンバーの名残を感じつつも新鮮」「千夏さんの存在感は世代を超えて健在」と好評を博し、旧作とあわせて動画配信サイトでも根強い人気を維持しています。
(LUIS FIELD)