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賛否分かれたアニメ版『打ち上げ花火』 “岩井俊二”と『まどマギ』の融和?

岩井俊二監督の人気ドラマを原作に、新房昭之監督が劇場アニメーション化した『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』は、賛否が大きく分かれた作品です。実写版とアニメ版はどこが違うのか、またアニメ版ならではのオリジナルシーンを解説します。

広瀬すず、菅田将暉が声優に挑戦

『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』 (C)2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会
『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』 (C)2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会

 岩井俊二監督の人気ドラマを原作にした2017年公開の長編アニメ『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(以下、打ち上げ花火)が、「金曜ロードSHOW!」(日本テレビ系)で地上波初放映されます。放送日は、2020年8月7日(金)の21時から。広瀬すずさん、菅田将暉さんら、若手人気俳優が声優を務めているのも話題です。

 アニメ版『打ち上げ花火』の原作となった実写ドラマ版は、1993年にフジテレビ系で放映されたオムニバスドラマ「if もしも」の一編でした。奥菜恵さん、山崎裕太さんらが出演した実写版『打ち上げ花火』は、少年少女たちの「幼年期」の終わりを描いた感動作として高く評価されました。実写版『打ち上げ花火』はテレビ放映後に劇場公開もされ、岩井監督は売れっ子監督となり、その後も『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)や『花とアリス』(2004年)などの素晴らしい作品を撮っています。

 今回のアニメ版を企画したのは、8月7日(金)から公開が始まる『映画ドラえもん のび太の新恐竜』の脚本も手掛けた東宝の川村元気プロデューサーです。アニメ版の脚本を執筆したのは、TVドラマ『モテキ』(テレビ東京系)で岩井監督へのオマージュを捧げた大根仁監督。『魔法少女まどか☆マギカ』で知られるアニメーションスタジオ「シャフト」が制作、新房昭之監督が総監督を務めています。

賛否が分かれた後半のオリジナル展開

 名作ドラマをアニメ化したことで大きく賛否が分かれたアニメ版『打ち上げ花火』は、こんなストーリーです。夏休みの登校日、中学生の典道(CV:菅田将暉)たち男子生徒は、打ち上げ花火を横から見ると平べったいか、丸いかで盛り上がっていました。そんななか、典道は親友の祐介(CV:宮野真守)とプールで50メートル競争します。祐介は、競争に勝ったらクラスのアイドル的存在・なずな(CV:広瀬すず)に告白すると宣言します。

 プールでの50メートル競争を起点に、「もしもの世界」が発動します。最初の競争には負けた典道ですが、「もしもの世界」でもう一度競争をやり直し、典道は念願叶ってなずなと一緒に花火大会へと出かけます。実はなずなは、母親(CV:松たか子)の再婚を嫌い、花火見物を口実に家出することを決めていました。思いがけず、典道もなずなの家出に同行し、ふたりは駆け落ちするはめになります。

 前半は、実写版をアニメーション表現へとほぼ忠実にトレースした形となっています。ですが、後半からは実写版を大きく離れ、アニメーションならではのオリジナルな世界が広がります。実写版のファンは、意外な展開に驚くことでしょう。

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