マグミクス | manga * anime * game

賛否分かれたアニメ版『打ち上げ花火』 “岩井俊二”と『まどマギ』の融和?

『まどマギ』を連想させるファンタジックな世界

 実写版とアニメ版との相違点を整理しておくと、実写版の典道たちは小学生でしたが、アニメ版は中学生となっています。また、実写版は45分という尺の中に揺れ動く少年少女たちの心理が凝縮して描かれていましたが、アニメ版の上映時間は90分と倍になっています。「茂下(もしも)」駅を出発した電車のなかで、なずなが松田聖子さんの人気曲「瑠璃色の地球」を歌うなどのオリジナルシーンが目白押しです。

 もうひとつ大きな違いは、実写版にはなかった「もしも玉」というアイテムがアニメ版には登場するということです。なずなが持っていた不思議な玉を典道は拾い、願いながら投げることで「もしもの世界」が開くのです。実写版では一度しか開かなかった「もしもの世界」ですが、典道たちは「もしも玉」を使うことで、複数回「もしもの世界」が開くことになります。

「もしもの世界」は、一種のパラレルワールド。打ち上げ花火の形も、見る人の心情によって変わって映るというファンタジックな異空間です。後半の展開を見て、劇場版『魔法少女まどか☆マギカ』三部作(2012年~2013年)を連想する人もいるかもしれません。

「もしも玉」に込められた想い

 原作となる実写版を撮った岩井監督は、川村プロデューサーが提案した今回のアニメ化の企画を面白がり、打ち合わせの場で新しいアイデアをいろいろと提供したそうです。

 アニメ版に登場する「もしも玉」ですが、ノベライズ本を読むと補足説明がされています。なずなの実の父親は海で亡くなり、打ち上げられた浜辺でなずなは「もしも玉」を見つけた、とあります。岩井監督は宮城県仙台市出身。東日本大震災の復興支援ソング「花は咲く」を作詞したことでも知られています。アニメ版『打ち上げ花火』の「もしも玉」には、震災で亡くなった人たちへの想いも密かに込められているようです。

 例年なら、夏には日本各地で花火大会が催されます。花火大会には、故人を供養するために始まったものも少なくありません。大林宣彦監督の『この空の花 長岡花火物語』(2012年)で描かれた長岡花火大会は、長岡空襲からの復興を願って始まった夏祭りがその起源となっています。

 打ち上げ花火は、この世とあの世とを結ぶように夜空を美しく彩ります。天国から眺める花火大会は、どんな光景なのでしょうか。そんなことを考えながら、打ち上げ花火を見上げると、いつもとは違った花火に感じられるかもしれません。

(長野辰次)

1 2 3