『戦争めし』の魚乃目三太氏 日本人の「食卓」描いて伝えたいこととは
『宮沢賢治の食卓』は、少年時代に読んだ『注文の多い料理店』がルーツ

少年画報社「思い出食堂」で、感動の食マンガを描き続ける魚乃目三太さん。2014~20年には、宮沢賢治の「食」にまつわる伝記マンガ『宮沢賢治の食卓』を連載しています。
「大正時代に、童話作家・詩人として活躍した宮沢賢治さん。代表作『注文の多い料理店』のなかには、『バター』や『ビネガー』などの言葉が出てきます。でも、この作品が執筆されたのは、まだ洋食が珍しい時代だったはずです。西洋の食事情に詳しい賢治さんは、かなりの食いしん坊だったのではないか――子どもの頃に抱いた疑問から『宮沢賢治の食卓』のアイデアが生まれました」
「雨ニモ負ケズ……」の詩で知られる宮沢賢治は、病弱で質素、我慢の人というイメージが一般的です。
「編集長に企画を相談したところ、宮沢賢治は小食で菜食家のイメージだから、食マンガにするのは難しいと言われました。でも、編集長はあきらめずに情報を集めてくれて、「思い出食堂」での本格連載に漕ぎつけることができました。
宮沢賢治の出身地・岩手県の花巻にある「やぶ屋」という蕎麦屋は、宮沢賢治にゆかりのあるお店。英語で藪(やぶ)を「BUSH」ということから、彼はこの店を「ぶっしゅ」と呼んで足繁く通っていました。賢治さんは、天ぷら蕎麦とサイダーが好きでよく頼んでいたそうです。
宮沢賢治さんは、調べれば調べるほどユニークな人。『宮沢賢治の食卓』の執筆は、とても楽しい仕事となりました。本作では、宮沢賢治作品から着想したイラストをカラー扉に描いています。幻想的な世界にするため、いろいろな画材を使って手描きをしたり、パソコンのデジタル画と合成したり、いろいろな工夫をしました。画集では、大型サイズでカラー掲載されているので、賢治さんの世界を楽しんでほしいと思います」