『原神』『崩壊』シリーズなぜここまでヒット? miHoYo・HoYoverse急成長の秘密 ゲーマー視点で分析
サービス開始からわずか2週間で、開発費を回収したと思われるビッグタイトル

●世界を驚かせた、基本プレイ無料のオープンワールドRPG『原神』
miHoYoの名を一躍知らしめた立役者といえば、2020年にサービスを開始した『原神』でしょう。『崩壊』シリーズで培われてきた魅力的なデザイン性は本作でも十分に発揮され、キャラクターたちはもちろんのこと、幻想的な世界観を描くグラフィックは見る者の目を奪いました。
『崩壊3rd』は、「アニメ調の美麗な3Dモデル」と「滑らかなアクション」を基本プレイ無料のスマホゲームで2017年に確立させ、注目を集めました。そしてこの『原神』は、3Dモデルにいっそう磨きをかけ、多彩なアクションも用意。さらに、オープンワールドという舞台まで実現させました。
買い切り型のゲームなら、家庭用ゲーム機向けやPC向けで近い条件を満たす作品は存在します。しかし、基本プレイ無料でこれだけの条件を2020年にクリアしたゲームとなると話は全くの別物です。
アニメ調の3Dモデルで、アクション性が高く、オープンワールドの基本プレイ無料という点でみると、『ファンタシースターオンライン2 ニュージェネシス』を思い出す人もいるでしょうが、こちらの作品がサービスを開始したのは2021年なので、『原神』の約1年後です。他作品の一歩先を行くmiHoYoの動きは、この『原神』でも健在でした。
●ケタ違いの成功を見せた『原神』の売り上げ

これだけの地力を備えた『原神』は開発費なども相応で、リリースされるまでに100億円かかったとも報じられていますが、サービス開始からわずか2週間ほどで回収したと思われる点も驚くばかりです。またSensorTower調べによれば、『原神』の2021年売り上げ額は約18億ドルと、立ち上がりだけでなくその後の人気も揺るぎないものでした。
ちなみに2021年といえば、アニメ人気を弾みに一躍大ヒットを記録した『ウマ娘 プリティーダービー』がリリースされた年でもあります。こちらも同調査によると、同年の売り上げは約9億6500万ドルとのこと。国内で一大ブームとなった『ウマ娘 プリティーダービー』も相当な売り上げですが、ざっと2倍を叩き出した『原神』がどれだけ躍進したのか、想像に難くないでしょう。
「ゲームの面白さ」と「売り上げ」は必ずしもイコールではありませんが、密接した関係にあるのも事実です。また、基本プレイ無料のゲームは、ユーザーを惹きつけ続ける魅力がなければ大きな収益には繋がりません。
●miHoYo・HoYoverse成功の要因は「萌えの再生産」
『原神』がなぜ、これほどの支持を集めたのか。プレイしたユーザーの数だけその理由はあるかと思いますが、ひとりのゲームファンとして感じたのは、やはりその「見た目」だと考えています。
過去作で積み上げてきた実績と経験を活かし、『原神』のデザインやビジュアルはさらに洗練されました。しかも今回はオープンワールドを採用し、美しい世界が見渡す限り続く壮大さも加わり、ゲームファンの度肝を抜きます。
『崩壊3rd』や『原神』を成功に導いた「見た目」の魅力を言語化するならば、筆者は「萌えの再生産」と捉えました。昨今あまり使われなくなった「萌え」という言い回しは、明確な定義が難しい言葉ですが、本記事ではアニメやマンガ、ゲームなどで培われてきた「日本のエンターテイメントから生まれた、独特の可愛さやデザイン性」を示す言葉として使用させていただきます。
視覚的な可愛さは、育った文化によって傾向が大きく変わります。そのため自国の「可愛い」が他国でもウケるかどうかは分かりません。ですが日本発祥の「萌え」は、相性こそあれ海外でも一定数の支持を得て、アニメやマンガなどが高く評価されました。なかには、こうした日本産のエンターテイメントに刺激されて来日したり、クリエイターを目指す人も出たほどです。
実はmiHoYo自体も、日本のオタク文化に魅了された初期メンバーが立ち上げたもの。当時は受け手として「萌え」を味わい、育った人たちが、今度は作り手に回ったのです。
こうした構図自体は、ゲーム業界だけに限っても、そう珍しい話ではありません。しかし特筆したいのは、「萌え」に触れたmiHoYoのメンバーたちが、新たな「萌え」を発信した点です。
「可愛さ」の基準が違う文化で育ったうえで、他国で培われた「萌え」の魅力を正確に理解する。これだけ見ても、miHoYoが優れたアンテナと視点を持っていることが分かります。そのうえで「萌え」を消化し、自分たちの内側から新たなデザインやキャラクターを生み出したこと──「萌えの再生産」こそが、『崩壊』シリーズや『原神』を成功に導いた最大の要因だと睨んでいます。
「萌え」を模倣するだけなら、それほど難しくはありません。しかし、模倣はあくまで模倣に過ぎず、オリジナルのデザインやキャラクターによる「萌え」を生み出すには、本質への理解なしには到底不可能です。
例えば、可愛いキャラのイラストを模写できても、人体の骨格を理解していなければ、ポーズの違うイラストを新たに描くことは無理でしょう。それは「萌え」も同様で、魅力の本質を理解しなければ、再生産のレベルは著しく下がります。ですがmiHoYoは、非常に高い理解度で「萌え」を消化し、『崩壊』シリーズや『原神』で見事な昇華を見せました。
●miHoYoとHoYoverseの猛攻は、最新作『ゼンレスゾーンゼロ』に続く

『原神』の大成功もあり、miHoYoのコンテンツを扱うブランド「HoYoverse」が2022年にスタート。会社の規模が飛躍的に大きくなるなか、体制の整備も徹底し、各作品がさらに力をつけていきます。そして2023年には『崩壊:スターレイル』を投入するなど、攻め続ける姿勢は今現在も変わりません。
『崩壊:スターレイル』もやはり、その「見た目」が持つ強みは圧巻の一言。実際に触れた経験がある人は、センス溢れるデザイン性や、そこから紡ぎ出される魅力的なキャラクター描写に驚愕したことでしょう。その衝撃と同じものが、2020年の『原神』、2017年の『崩壊3rd』の時にも起こったのです。
発祥ゆえに、日本のクリエイターが一歩先んじていた「萌え」という強みを、他国の文化圏にいながら獲得したmiHoYoとHoYoverse。『崩壊』シリーズは今なお愛されており、『崩壊:スターレイル』の出足も好調です。『原神』はもはや絶対的な看板ですし、今回は触れていませんが女性ゲーマーを狙い撃った『未定事件簿』など、その牙城はもはや崩しがたいほどです。
さらに、『ゼンレスゾーンゼロ』という次なる矢も控えており、同社の躍進は留まるところを知りません。「萌えの再生産」は今後も強力な武器となって、日本国内や海外を席巻することでしょう。
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※記事中の名称などは全て日本向けの表記で統一しています。
(臥待)