『トムとジェリー』ケンカし続けて80年。子ども心に焼き付く珠玉の3作品
アイデアに富んだ『トムとジェリー』名エピソード3選

気になってDVDシリーズを調べてみたところ、確かに「夢よもう一度」というエピソードは実在しました。ですが、トムが夢の中でも現実でもブル公にいたぶられるという内容で、ネット上で広まっているものとはまったく異なる内容でした。どうやら噂になっている『トムとジェリー』の最終回は、日本のいちファンが作った創作物のようです。
DVDを見直していると、懐かしさがこみ上げてくる名エピソードの数々に再会しました。その中から、多くの子どもたちが繰り返し見たであろう人気作3本を紹介したいと思います。
まず1本目は「勝利は我に」。地下室でトムとジェリーが戦争ごっこを繰り広げるというものです。襲いかかるトムに対し、ジェリーは小麦粉の煙幕を張り、さらには卵パックを加工した爆撃機で宙を舞い、電球やバナナを爆弾代わりに投下します。太平洋戦争中の1943年に劇場公開され、アカデミー賞短編アニメ賞を受賞した名作です。戦時中という世相を色濃く反映したストーリーですが、家の中を戦場に見立てたハンナ&バーべラのユニークなアイデアは何度観ても飽きることがありません。
2本目は戦後間もない1947年に制作され、やはりアカデミー賞短編アニメ賞を受賞した「台所戦争」。感謝祭の夜、ジェリーは身寄りのない子ネズミのニブルスの空腹を満たしてあげようと考えます。このときの食卓に並んでいるのは、七面鳥の丸焼き、パスタ、温かいスープ、弾力性抜群のぷるんぷるんしたゼリー……。子ネズミだけでなく、テレビの前の日本の子どもたちも、ごちそうの数々に目が釘づけとなりました。トム、ジェリー、ニブルスが仲良く食卓に並ぶラストのオチも秀逸です。
3本目は1958年に制作された「赤ちゃんは知らん顔」。いつもケンカばかりしているトムとジェリーは、この日はご主人夫婦の赤ちゃんがハイハイして家から脱走したため、命がけで救出に向かいます。トムとジェリーが阿吽(あうん)の呼吸で協力し合う、笑いと感動を交えた小粋なエピソードなのですが、ハンナ&バーベラによる第1期はこれが最終話でした。
第二次世界大戦中に始まった劇場用アニメということもあって、『トムとジェリー』には暴力的なシーンが少なくありません。でも、『トムとジェリー』を楽しんでいた子どもたちにとっては、暴力=いじめはとても身近な問題だったはずです。体の小さなジェリーは、俊敏さと機転によってピンチを脱します。トムも意地悪なだけでなく、お人好しな顔もちょくちょく見せる、多面的なキャラクターとして描かれていました。何よりも、子どもたちを元気づける明るいユーモアが作品から溢れ出ていました。『トムとジェリー』は子どもたちにとって、教科書以上に大切なテキストだったのかもしれません。
(長野辰次)
(c)Warner Bros.Entertainment Inc.TOM AND JERRY and allrelatedcharactersandelementsaretrademarksofand(c)TurnerEntertainmentCo.





